Twilight of midnight

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赤狐蒼狼琴奏記(短編)

赤狐蒼狼琴奏記 はじまり。

「はー……」

俺は空を見上げてため息をついた。
大きな月が空から俺を静かに照らして、星がちかちかと瞬いている。
ざわざわと静かに風が吹いて、新緑のやさしい匂いが漂ってきた。
足に当たる草の感覚が心地よい。

「はらへったな……」

草を踏む乾いた音に腹の音が混じった。
この空腹さえなければ最高の夜だといえた。
最後に飯を食ったのはいつだったかなぁ。
一週間ほど前まで記憶を戻し、肉のやわらかい口当たりを思い出そうとした。
だが、むなしく味だけが蘇ってきて空腹を余計に刺激するだけ。

「どっかに肉落ちてないかなぁ」

薄すぎる望みを偶然に託す。
俺は地面に伏せるとじっとして体力を温存することにした。
栄養が不足すると目もかすんできてまともに見えない。
少しでも寝て、休息を取り、体力の回復を待たねばいざという時に動けない。
もし獲物の匂いが漂ってきたら絶対、捕獲してやる。
俺はそう決めて前足に顎を乗せた。
視界に入ってきた長く伸びた爪が月光に鈍く、白く光っている。
口からはみださんばかりに生えた牙もきっと光っていることだろう。

「はぁ…………」

もう一度俺はため息をついた。
腹が減ってはこうも感傷的になるものか。
いつもは艶を含み、月光を浴びると蒼く輝いていた毛も今は泥に汚れ、くすんだ色しか出さなかった。
少し寝よう。
起きたら狩りをして何か食べないと本当に死ぬ。
お肉、食べたいなぁ。
目をつぶり、小さく息を吐いた。
でも耳だけは常に周りを警戒する。
もし敵が来たとしても返り討ちにして食ってやる。
俺はそう誓って眠りに落ちようと心を落ち着かせた。

「おい」

気のせいだろうか。
寝ようと思っていたというのに話しかけてくるバカが現れた。
気が立っているって気が付かないのだろうか。
寝ているとでも思っているのか?

「おい」

なにも反応を返さないでいると、額にごすっと軽いショックを感じた。
いったい何様だ、この俺にちょっかいをかけてくる奴は。
死を覚悟してのことだろうな。
ふつふつと怒りが沸き上がってきた。

「生きてるのか?
 おーい」

うっすらと目を開けてちょっかい魔の正体を確かめる。
何か動物なら食ってやる。
心にそっと誓って正体を確かめた。

「っ、人間!?」

「おー、生きていたか。 
 よかったよかった」

びくっとして俺は人間を見上げた。
月光に輝く真っ赤な髪をした人間は俺を恐れることなく逆に近づいていきやがった。
真っ赤な髪を垂らした頭からは狐のような鋭い耳が覗いている。
キラキラと星のように光っているのはピアスだろうか。
くりっとした丸い瞳に、やわらかそうなほっぺたには意地の悪そうな笑みを引っ付けている。
首には何か黒いものを巻きつけていて、ペンダントのようなものを下げていた。
服は柔らかなどこか懐かしい匂いのするものを着ている。
月を背に俺に向かって立つ姿は、幻想としか言えないような美しさだった。
俺は戦闘態勢を取ることも忘れ、人間の姿を唖然として見上げるしか出来なかった。

「なっ、き、きさまは……!?」

相手が人間であるにも関わらず俺は言葉をかけてしまった。
親元から離れて二か月になるがこんな人間初めて見たぞ。
俺の耳を逃れて間近にまで接近してきてちょっかいまで仕掛けてくるなんて。
てっきりリスか何かと思っていたというのに。
混乱しているときはとことん混乱する。

「私か。
 私は、麓(ろく)。
 天狐だ。
 いわゆる狐の最上級だな」

麓とか名乗った人間は俺にまた一歩近寄ってきた。
天狐?
初めて聞くな。
狐は知っているが人間の姿じゃなかったぞ。
疑問を抱きつつ、安全な距離を保つため二、三歩後ろへ下がる。
油断させつつ銃で撃ってくるかもしれない。
狐だろうがなんだろうが人間の姿を借りているのは信用ならんのだ。

「違う。
 いわゆる神だよ。
 だから言葉わかってんじゃん?」

神だと。
おかしいだろ。
天狐とかいったか?
なんで狐が人間の姿をしているんだ。

「ん、どうでもいいけど心も読めるから。
 その辺覚えておいてね」

びしっと俺に人差し指を突き付けて不敵に笑う。

「………………」

覚えておくも何も、これから先関わり合いなんてないだろうに。
というか、俺こいつ怖い。
危ないもん、なんか。
野生の本能が俺の身の危険を察知して叫んでる。
出来れば逃げたい今すぐ。

「あ、逃げないで。
 私が困る。
 もー、感謝しろよ。
 お前は私のものになるんだから」

「はぁ!?」

思わず声が出てしまった。
俺がお前のものに?
人間界でいうペットとかいうやつか?
嫌だぞ。
屈辱の極みだ。

「ペットじゃない。
 なんていうか……。
 いわゆる私の召使いみたいな感じだな」

召使いってなんだ。
おいしいものでも食べれるのだろうか。
狩り立ての鹿の肉とか。

「とにかく。
 なんやかんやあって私はここ一帯を任された。
 本来私の仕事じゃないんだけどなぁ。
 まぁ神業界も人手不足なのよ。
 そんなわけでお前は私にこの辺を教えたりサポートする役目ってわけ。
 それにお前あのまま寝てたら死んでたぞ」

麓はそういってにははと笑った。
俺が――死んでた?
ぞくっとした寒気が背中を駆けた。

「あ、ちなみに拒否権はないから。
 なんか私、お前見たときびびっと来たんだから。
 狐が狼を従えるって面白いじゃん?
 ネタ的に考えても」

いや、知らんけども。
こんなよくわからないのが神なのか。
世の中は本当によくわからん。

「あ、それにお腹減ってるんでしょ?
 私の召使いになるなら何でもしてあげる。
 飯も出してあげるし」

「なるほど。
 召使とやらになろうじゃないか」

「決断が早いな。
 普通少し考えるだろう?」

そりゃそうだ。
飯が食べれると聞いて断るわけがない。

「あー、だめだな。
 なんか、私狼に話しかけてると周りの神からすると痛い神みたいじゃん。
 ちょっと姿変えさえてね」

痛い神――?
いたがみ?

「あ?」

「何でもないです」

思いのほか怖かった。
狼のプライドもクソもない。
ぎろっと睨みつけてきた瞳には殺気すらこもっていた。
今まで感じたことのない強さの。
心が読まれるってこんなに嫌なことだったのか。

「んー。
 そうだなぁ、あんたがもし人間にうまれてたらーって感じの姿でいっか。
 めんどくさいし、考えるの」

麓はそういうと俺の頭の上に手を置いた。
何、何をするつもりなの。
思わず前足で麓の手をどけようとする。

「いってぇ。
 動くな、ボケ」

頭をぱしっとたたかれた。
どうやら長く伸びた爪が麓の皮膚に食い込んでしまったらしい。
麓の表情が苦痛にゆがんだ。

「――ごめんなさい」

「ん」

くそっ、なんで俺謝ってるわけ。
神にただの獣は勝てないってことか?

「そういうこと」

うるさい、いちいち心読むな。
めっちゃ不便だよ、くう。

「じゃ、行くよ。
 えりゃ」

麓が俺を触れている部分が熱くなった。
そこから全身へと熱が広がってゆく。
微妙に温い川に入ったような、そんな微妙な感じが全身を覆った。
と、突如体内から何かこう……。
突き上げてくる気持ち悪さが生じた。

「もういいよ」

気持ち悪さに吐き気を催しながら俺はゆっくりと目を開ける。
真っ暗だ。
それもそのはず、麓が手を乗せているのだから当然か。

「邪魔だからどけろよ」

俺は麓の手をどかそうと手を動かした。
だが若干の違和感を感じて動きを止める。
なにこれ。

「わお、お前ハンサムなんだな、人間にすると」

は?
ハンサム?
しかも人間基準?

「何を言ってるんだか……」

「いいから見てみろよ。
 自分のからだとか顔とか」

俺は麓の手が離れたのを合図にいろいろ確かめてみることにした。
そして違和感を確かめるため自分の手を動かしつつ、見てみた。

「…………!?」

五本の肌色の指がぐねぐねと動いている。

「はっ!?」

「にはははは。
 成功成功。
 いやーこんな簡単なの失敗したらどうしようかと思ったよ」

左手も同じようにして確かめてみた。
やはり俺の司令通りにぐねぐねと動く。
まるで俺が大っ嫌いな人間の手のように……。

「俺に何をした!?」

頭が深まった混乱の中に落ちていくのが分かった。
この天狐さんは俺にいったい何をしたんだ。
説明を求めるぞ。
短く、簡潔に。

「だーかーら。
 私があんたに召使いとやらの姿を与えたんだって。
 むしろ名誉なことだよ?」

麓は俺のほっぺたをつねると満足そうに頷いた。
そして小さく「上出来、上出来」と漏らす。

「顔も人間だから。
 えーっと、名前は――そうだなぁ。
 狼だし、ウルバルでいっか。
 これからよろしくね、相方」

麓はまた意地悪そうに俺を見て笑った。





                This story continues.


読んでいただきありがとうございます。
しゃくでばにかわるコメディほのぼの小説記念すべき第一話です。
毎週金曜日にほのぼのと更新していきます。
たぶんほとんど会話オンリーな話になるかとw
狼と狐がじゃれるだけのお話なので。
ちなみに舞台は架空世界ですゆえに現実とは同調しません。

それでは、読んでいただきありがとでしたーっ。
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~ Comment ~


ポールさんへ

餌ですね。
間違いないです。
がぶりっ。
#2605[2012/06/07 23:20]  レルバル  URL 

「X-MEN」の黄色いやつ!と思ってしまったわたしは蒼狼さんのエサでしょうか(^^;)

えーだってさー(^^;)
#2602[2012/06/06 15:27]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

lime姉さんへ

狼なのに狐の配下なのです。
不憫といっちゃ不憫ですw

ウルバル頑張ってほしいですねw
さてさて、苦労を今からウルバルがのんびりと教えてくれます。
来週をお楽しみにです。
#2599[2012/06/04 01:12]  レルバル  URL 

蓮兄さんへ

しゃくでばに代わるお話です。
おそらくもう書かないです、しゃくでばは。

狐が狐らしくないんです。
でも油揚げは好きだと思います。

ほ、ほんとうですか?
ありがとうございます。
がんばって描いていきますのでどうぞよろしくお願いします。
#2598[2012/06/04 01:11]  レルバル  URL 

歌さんへ

架空世界ものですっ。
ウルバルはアイコンですねww
アイコンであってまっすww
GJですww

金曜日ほんわか日になりますよっ。
#2597[2012/06/04 01:10]  レルバル  URL 

いいですねえ~、狐に召使いにされちゃった狼。
(しかも、イケメン狼w)

この狐さん、わがままそうで、これからのウルさんの日々が思いやられますね。
続き、楽しみにしています。
#2596[2012/06/02 01:35]  lime  URL  [Edit]

お、しゃくばに変わるお話ですね。
狐が狐らしくなくてカッコ良いです。
褒めているんでしょうかね。等身大なのが良いですね。
私的に読みやすいです。
#2595[2012/06/01 17:50]  LandM〔才条 蓮)  URL 

おおっ、架空世界ものですか……! 天狐の麓さま、なんか可愛い(`▽`*
そしてウルバルwwwww お名前にアイコンを思い浮かべてしまいましたwwww
金曜を楽しみにしております~。
#2594[2012/06/01 16:12]  歌  URL 














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