Twilight of midnight

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怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第十八話

《来たぞ!!
 撃ち落せ!!》

シエラは目の前にある艦を躊躇することなく光波共震砲で破壊した。


光波共震砲は、熱光電子という電子の一種をお互いにこすりあわせることによって
強力な熱を放つレーザーである。
超空要塞戦艦の主砲にもなったベルカ帝国が最後に発明した最強のレーザー兵器だ。
このレーザー自体は爆発とかの力はなく、船体などを溶かしながら突き進み
やがて貫通するという貫通性が優れたレーザーになっている。
可変式鋼鉄細胞、つまりシエラやメイナを殺すことができる唯一の武器で最終兵器が
暴走した時など、緊急用につくられた兵器でもある。
オレンジ色の閃光のまわりを小さな周辺光がまとわりつくように囲み
共震しあって、約十?十五万度もの高熱を発することが出来る。
撃ち出したときは、常温とおなじぐらいなので砲身が溶けるおそれもなく
しばらく飛んでいったら、やがて熱をうしなうという性質から安全装置のついた兵器ともいわれた。
それを、左手につけたシエラはそらを覆うほどの対空機銃や高角砲の隙間をみつけては
とびまわり、一瞬の隙を狙ってレーザーを撃ち込む。
ミサイル駆逐艦や巡洋艦から放たれたミサイルなどは
右手のレーザーでさっと一掃して、次のミサイルの発射準備にはいっている艦に
左手のレーザーを何発も、何発も叩き込んだ。





遠くから見ても圧巻である。
爆発音がなりひびき、戦艦や巡洋艦から弾が放たれた音が聞える。
時たま、オレンジや赤の閃光が空から地上へと走り、空中での爆発
もしくは、海面上で爆発が見える。
 シエラ
「恐怖神…」

俺は思わずそう口に出してしまった。
それほど、今俺は唖然とさせられている。

「ふーん、結構がんばるなぁ」

メイナが頭に手をあて日差しをさえぎりながら言う。
それって苦戦してるってことなのか?

「ん?
 いや、ただ楽しそうだなぁ…と思って」

楽しそう…か。
俺は人に死をあたえるなんてたいそうなことは出来ないね。
ま、鬼灯のおっさんがどうしてもっていうなら殺しもするけどさ。

「お、また一つ沈めたね」

そういうと黒い煙がもうもうとあがっていくのが見え
エネルギー衝撃波がビリビリと伝わってくる。
ってか、メイナも今、パンソロジーレーダーを使ってるのか。
便利なもんだな、それ。

「疲れるけどね」

そうなんだ。
ま、見えない俺はシエラの勝利を祈るだけだ。
―勝てるよな?頼むぜ、最終兵器。





《右舷大破!》

《浸水状態、赤に移行!!》

《弾薬庫浸水!》

ルドルフは無線から次々と飛び込んでくる艦隊の損害状況を理解出来ずにいた。
「この艦隊に勝てるものか!」と何度も横で爪を噛みながらつぶやいている
第十二艦隊司令の存在はかなり薄く、ルドルフはいままで気がつかなかった。
部下からの報告によれば、
沈没が、駆逐艦三十五、巡洋艦二十、戦艦二で
大破が、駆逐艦十、巡洋艦五、戦艦三、空母二となっている。
小破や中破などですんでいるのは士気が低くあまり最終兵器に攻撃しない艦達だ。
最終兵器は確実にダメージを与えられるところ…
例えば、弾薬庫や燃料室、機関室にオレンジのレーザーを正確に撃ちこみ
誘爆させて、中から壊し、大破もしくは爆沈にまで追い込んでいる。

「くそ…」

CICの壁を叩き、ルドルフは床に崩れ落ちた。
ミサイルが敵に命中したかと思うと、ミサイルを吹き飛ばし飛んできたレーザーで
ミサイルを撃った艦が爆発しているという現象も珍しくはなかった。
すれちがいざまに、何発も何発も打ち込まれた艦が中から爆発で
吹き飛び、二つに折れて海中へと没していき
運良く機関室など致命傷になる場所にあたらなかった艦も
指揮系統が切れたり、排水ポンプがこわれたり、多大な浸水があったりと
艦の運営に大きな支障をきたし、沈没したのとさほど変わらない『大破』となった。
敗北感で埋められたルドルフの頭に

「敵が来ます!!」

オペレーターの金切り声が飛び込んできた。

「敵…か
 恐怖神はわれわれのことではなくあいつのことだったようだな、副長?」

ルドルフは、故郷の妻と娘の顔を思い浮かべ
「すまない、おみやげは無しだ」
と、呼びかけた。

「えぇ、どうやらそのようですね」

どこかしらまだ幼い副長はルドルフに今回も異論を唱えることなく同調した。
ルドルフは一心に「死にたくない、副長を、この艦のクルー達も」と思い一心不乱に打開策を探す。
だが恐怖神は待ってはくれなかった。
再びどこかで爆発が起こり艦が沈んでいく悲鳴が海に響く。
そして目をつぶ次は己の身と覚悟して目を瞑ったそのときだ。

「来ました!
 味方戦闘機部隊です!!
 敵が進路をかえ、戦闘機部隊に向かっています!!」

助かった…のか…?
ルドルフは、目を開け、レーダーを見た。
敵…シエラをあらわす緑の光点が自艦から急速に離れていき
その先にある、蜂のような数の味方をあらわす青い光点の大群につっこんでいくのが見えた。

「今のうちに体勢を立て直すんだ!!
 急げ!!」

ルドルフの頭は急速に冷え、士気の低い艦にゲキを飛ばしながら再集結の命令を伝えた。
横で、司令がおたおたしているがしったこっちゃない。
むしろ邪魔だ。
冷静になったルドルフの頭は、シエラへの確実な反撃の方法を考えはじめていた。





ヒューン…とたくさんの鳥の大群が襲ってきたみたいだ。
鋼鉄の翼にたっぷりのミサイルを取り付けた戦闘機部隊は目標――。
シエラに一斉に襲い掛かった。

「ちっ…」

飛んできたミサイルを一瞬で通常に戻した右手で掴み横をすり抜けた戦闘機へと投げつける。
グァ!!とミサイルが爆発し、火達磨となった一機の戦闘機は海面へと火の尾を引きながら
落ちていき、水柱を作った。

「にしても…」

数が多すぎる。
左手を、戦闘機などを破壊するときに使うレーザーに変えて目の前の鉄の鳥の大群に襲い掛かる。
だが……

「くっ…」

激しく動いてもすぐにロックオンされどこからかミサイルが一斉に飛んできて
味方への被弾を気にせず機銃を乱射してくる。
正直言ってキリがない。
パンソロジーレーダーで見る限り軽く四百を超えているであろう鉄の鳥たちは
少しでも隙をみせたらはげしく襲い掛かってくるに違いない。

「うっ…」

また来たミサイルを弾き飛ばし爆風から逃れるべく横に高速で移動する。
いい加減イライラが蓄積してきたシエラはいっきに鉄の鳥を吹き飛ばすため鉄の羽に力を蓄えはじめた。





「お、来るわよ!」

メイナが目を細めて見たところはさっき戦闘機が飛んでいった方向だった。

「なにが来るって言うんだよ?」

防水仕様もあるPCをまたカタカタやりはじめながらいった仁にメイナは

「バカね
 さっき言った衝撃波散弾レーザーに決まってるでしょ?」

言ったっけ?
いってないよな、お前。

「ま、いいのよ、それは」

そうですか。

「なんでくるってわかった?」

俺の素直な疑問である。
いや、だってね…
しりたいでしょ、普通は。
ってか絶対言ってないだろ。

「簡単よ。
 シエラの背中の鉄の羽が青く光りはじめたら力を集中させているということ。
 大体二分ぐらいしたら、ブワ?ってすごいのが見えるんだから!」

なんで興奮してるんだよ。
俺は、人が死んで楽しむなんてことは絶対にできない。
ここが、人と最終兵器との観点の違いだろうな。
ニコニコとしながら「見逃すなよ!」といわんばかりに空を指差したメイナは
眠いのかあくびを一つ、二つ。
なぁ、教えてくれ。
俺はいつまでここにこうやっていればいいんだ?





「再集結完了しました!」

「ん、ごくろう」

ルドルフはのこった艦を集めて一箇所にまとめることにより
将棋で言う、アナグマ戦法をとることにした。
攻撃を控え、防御をだけを大幅にアップさせる戦法だ。

「くっ…」

敵の攻撃パターンが少なすぎて、予想ができない。
せめて、敵がどのような技を使ってくるのかどうかぐらいは知れたらいいのだが…
と、考えたルドルフの頭を嫌な予想が横切る。

「まさか…な…」

まさか、それのためにここまでの大艦隊を使うとは思えない。
口に出して確認するまでもない。

「敵の攻撃パターンを知るために、我が艦隊を使うわけ…」

一人でさっきからブツブツの呟いているのを見かねたのか副長が
「は?」と、疑問の目を向ける。
副長に気にするな、と言おうと肩を叩いた瞬間

「味方戦闘機部隊が敵を我が艦隊上空まで誘導を完了しました!」

その声を聞き、戦況が自分の思い通りになっていると思ったルドルフは
敵へ向けての一斉攻撃を加えるためマイクに手をのばした。
が…

ズドゥゥゥ…

と、大きな爆発音を上空で聞きパニックになったルドルフは
状況を確認するため、CICから飛び出しブリッジへと走り出していた。
ブリッジのドアを思いっきり開けガラスを通してそらを見る。

「っ!?」

あれほどあった戦闘機が一つも見えなくなっていた。
太陽がルドルフの寝不足気味の目を刺激する。

《どうした、なにがあった!?》

《こちら空母ナルリアーナ戦闘機部隊、何があった!?
 応答しろ、おい!》

《こちらミサイル艦ピッグラトだ!
 太陽が……青い太陽が戦闘機を飲み込んだようにみえたぞ!》

味方の無線が消えた戦闘機部隊に呼びかけられる。
何が起こったのかルドルフ自身も判断できなかった。

「軽く四百を超える戦闘機が…消えた…?」

と、ブリッジの天井に何か硬いものが何度も何度もぶつかる激しい音がする。
思わず不安げに天井を見たルドルフの目の前でガラスをぶち破って黒い鉄板が降ってきた。
ブリッジ内のパイプ類や機器を曲げたり壊したりしながら止まった鉄板には
連合郡第十二艦隊航空部隊所属を現す『AIR SIEER 165』という文字が白くペイントされていた。





「ふぅ…」

一気にシエラの周りを飛び回っていた戦闘機部隊は
衝撃波散弾レーザーの広い散布界でほとんどを撃墜した。
後は、残りの艦隊をつぶして終わりだな…
戦ったときにはまだしっかりと照っていた太陽は明日へ向けての準備のためか
光を次第に弱くしていき、海は血の赤から紫へと変わりつつあった。
残りの艦を片付けようと汗がにじんできた髪の毛をかき上げふと下を見ると
さっきまでばらばらだった艦隊が再集結していた。

「ちっ…」

ミサイルの爆風で服がぼろぼろだ…
上着を脱ぎ捨て、靴や靴下も脱ぎ捨てる。
そして、シエラは残りの艦隊を壊滅させるためにスピードを上げた。
さっきよりもすさまじい対空砲火をくぐりぬける。
だが、チクッと左腕に痛みが走り、弾が左腕をかすったのをシエラに教えた。





「なぁ、助けなくていいのか?」

俺は青い光が空を覆い、今までうるさかった飛行機の音がやんだ時をはかってメイナにたずねる。
空は沈没や大破した艦からわきおこった煙で黒いはしらが何本も立っているようだ。
メイナがいうにはまだ海面にはたくさんの人が浮き沈みしているという。
甲板からこぼれおちたり、中から爆風で外に押し出された人ばかりだろう。
中には手足がちぎれてもなお、生きようと必死にもがいている人もいるという。
ここは、戦場で情けは無用などと言うが目の前で人が生きようともがいているのに
助けないなんて逆に耐えられない。
ましてや、戦艦などから流れ出たオイルに火がつき、
その火の中で人が焼かれながらも生きようともがいているなんて…
生々しい現実。
あの鋼鉄かの棺桶の中には沢山の人間がいてそれぞれに家族がいる。
それを一瞬で消し去っていく最終兵器。
俺は今地獄をみているのだろうか。
コレが本当の地獄なのだろうか。





空に向かって吐き出される弾丸。
それをイージスで曲げながらシエラはイージスを強化した壁のようなものを作り上げる。

《う、うわぁぁ!!
 な、なんなんだよ!!
 ちくしょう!!》

パンソロジーレーダーが拾う、敵の悲鳴が心地よい。
思いっきりの速度でシエラは真下にある巡洋艦にイージスの壁を作りながら突っ込んだ。
艦橋や、甲板、CICなどをつきやぶり、船の背骨ともいえる竜骨をくだき船底を突き破って外に出る。
けっこう、体に負担がかかるがこの方法は確実に敵艦を沈めることができる。

《こ、こちら、ミサイル巡洋艦パスカディーム!!
 敵の体当たりを食らった!!
 操縦不能!!
 くそっ、あいつすれ違いざまに弾薬庫に火をつけていきやがった!!
 爆発するぞ!!
 総員退艦!!総員退か…》

今、つっこんだ巡洋艦から旗艦への通信が途切れ新しい黒煙の柱が追加される。
すこし深く潜った後、再び勢いをつけて、別の艦の船底へと弾丸のように突っ込む。
艦をつきぬけ、艦橋をへし折り空中に出たシエラに戦艦の四十二センチ六十口径砲が火を吹いた。

「痛っ!」

人の身長+αの大きさの砲弾がシエラに空気を切り裂きながら突っ込む。
シエラは本能的に右手を突き出し、砲弾を受け止めようとする…が
砲弾は思いのほかやわらかく右手につきささると同時に爆発した。
あまりの事に思わずイージスを緩めていたシエラの体を破片が容赦なく切り裂き
爆風が皮膚を焦がす。
血が、パタパタッとながれ結構痛いな…とシエラは顔をしかめた。
今、弾を撃った戦艦の第一砲塔のほかに二つある砲塔も効果ありと見たのか
旋回をはじめ、シエラへと砲門を向ける。
今の戦法に活路を見出したほかの艦も戦艦に続けといわんばかりにそれぞれの主砲を向け
シエラへと照準をあわせる。

《撃て!!》

と、パンソロジーレーダーが敵の無線を拾ったが思ったより傷が深いシエラは
とっさに反応することができなかった。
数え切れないほどの砲弾が獲物へと襲い掛かる鷹のようにシエラへと襲い掛かる。
左手が破片で機能停止しかかっており
さすがにちょっとやばいな…という危機感がシエラを駆り立てた。
高速で飛び砲弾をかわすが次から次へと襲い掛かってくる砲弾。






「ルドルフ大佐、もういい加減に…」

「司令、黙っていてください。
 これは我々の戦いなのです」

「もういい、もういいんだ、ルドルフ大佐!!
 データは十分に取れた!!」

そういった司令はしまったとばかりに口を押さえるがルドルフは今の言葉を聞き逃さなかった。
やっぱりそうか…とルドルフは心の中で嘲笑し、レーダーに映る最終兵器を見ながら
また、味方の光点が一つ消えるのを見てしまった。
CICがゆれ、司令が転びそうになって机の上の海図を破りそうになったりコーヒーがこぼれたりしたが
もう誰も気にせず、レーダーもしくは自動照準機を見つめる。

「なぁ、みんな。
 このまま撤退したいか?」

思わず、全艦隊に聞えるマイクのスイッチをいれルドルフはこう吹き込んでいた。

「撤退したいやつは撤退するがいい。
 だが、俺と戦うっていうやつは俺と一緒に勝とう。
 ここからは諸君の自由だ。
 好きにしてくれ。
 撤退するとしても上空のあいつが無事に帰してくれるとは思えないがな」

しばらく間があったあと、無線機がガガガ…と鳴り始めた。
そして

「こちら、巡洋艦ミケトール。
 ここまで味方をやられその挙句撤退なんて…
 世界の第十二艦隊の名が泣くってモンです!
 我々はあなたについていきますよ!
 我々の命、あなたに預けます、ルドルフ艦ちょ…」

ブツッ!と、無線が切れると同時に

「巡洋艦ミケトール、撃沈!」

とオペレーターの声が響く。
ミケトールの船体が鉄の悲鳴を上げ海水を押しのけ沈んでいく。
生存者はなし。
ルドルフは思わず敬礼してごくろうだったと心で巡洋艦ミケトールの英霊達に呼びかけた。

「こちら、空母モントリアル。
 我々は大切な乗組員で仲間だった航空機部隊をあいつに落とされた。
 ゆるすわけにはいかない。
 艦長、勝ちましょう!」

その放送のあいだも、どこかで大きな爆発音が響きまた一隻味方が沈んだことを知らせた。
ポン、と肩に手が置かれ振り返ると副長がにっこりと笑い

「目に、ものを見せてやりましょう、艦長。
 我々こそが、本当の『恐怖神』だと…」

「…そうだな…」

ルドルフは帽子を深くかぶり、CIC内を見回した。
そして、最後となる突撃の命令を下すためマイクを手にとった。

「いくぞ!!
 我々は絶対に負けない!!」

そう吹き込むと艦隊全体から歓声が沸き起こり、艦隊が一つの生き物として動き出したようだった。





シエラめがけて、さっきよりも正確に弾が飛んできて、ミサイルが次々と命中する。
まだ、戦う意志があるのか…とシエラは内心おどろき
ならその士気をへし折るまでと次々と艦を沈めていった。
ある艦は二つに折れ、またある艦は大爆発で膨張して外板を吹き飛ばし
炎上しながら沈んでいった。
だが、どの艦も沈みきるまで殺意を失うことはなくそれがかえってシエラの殺戮欲を刺激した。
太陽が沈みきった同海域は火が燃え盛っておりとても明るく
月すら、出るのを遠慮しているような明るさだ。
あちこちで兵器が爆発し、艦の上では機銃の火がちらちらと照る。
飛んできた弾をイージスで防ぎながらも疲れにより次第に防げない弾が出てきてそれがシエラの体を
次々と傷つけていった。
シエラの力が弱ってきているのは見てわかった。
左腕が機能停止一歩手前なので、左側にイージスがはれないのだ。
だが、最終兵器という名前はだてではなく次々と艦は沈んでいった。
やがて、残るは旗艦であろう戦艦一隻だけになりその横ではさっきまで
シエラの攻撃を何発も何発もその巨体に受けながらもたくみにバランスを調節しながら
隙がない対空気銃の嵐を築いていた戦艦の艦首がいくつにも砕けた船体にひきずられ
海中に没していくところだった。
ここまで、自分を相手に戦ってきた艦隊の旗艦の艦長を見たくなり
ふとした思い付きでシエラは旗艦の対空気銃の嵐を潜り抜けながら甲板に着地した。





「敵が第一甲板に着陸しました!!
 いま、戦闘員との戦闘を繰り広げています!!」

オペレーターがルドルフの方を向いて言った。
その報告にそうか…と答えルドルフは頬についた司令の血をふき取った。
拳銃についた血もふき取り、撤退の言葉を連呼した司令は胸に
艦長じきじきに鉛弾をプレゼントされ、血溜まりの中に沈んでいる。
上甲板でサブマシンガンがくぐもりながらも唸っている。
悲鳴、甲板にばらばらになった肉が四散する音。
それらすべてが静かなCICの中にいる艦長の耳に入ってくる。
この艦はもはやルドルフの体そのものといっても過言ではなかった。
そしてサブマシンガンや悲鳴さえ聞えなくなってきたとき

「今まで…ごくろうだった…」

ルドルフはぽつりとCICのみんなにそういって全艦放送に切り替えた。
沈んでいる戦友たちにも聞えるように…

「今まで本当にご苦労だった。
 現時刻をもって、諸君らの任務を解く。
 生き残るも死ぬも諸君の好きなようにしてくれ。
 最後に、諸君らは本当に…海の漢だ」

マイクのスイッチを切り、CIC全員と握手したルドルフは椅子にどっかりと腰掛けた。
天井からパラパラと破片が落ちてきて、機器にあたり乾いた音をたてる。
最終兵器と戦うため銃を取り出したオペレーター達は戦場に赴こうと席を立った瞬間に
上から静かに落ちてきた天井につぶされて絶命した。
CICの天井は砲撃などにも耐えれるよう頑丈に分厚く作られておりそれが災いとなった。
天井につぶされた、機器から火花が飛び散り、配線からショートの煙が昇る。
二酸化炭素消化装置も壊れてしまったのか作動せずさっきまで艦中に満ち溢れていた
部下達の生気はもう感じられなくなっていた。
あまりに突然のことで、ルドルフは唖然としたが煙にひそんでいる気配をしっかりと感じていた。

「俺一人が残ったというわけか…
 こいよ、小娘…」

煙の中に話しかけると天井の穴からさっと、写真で見たとおりの娘が降りてきた。

「お前ごときに我が艦隊が…全滅…か…」

ルドルフはそういって、クックックと自分に嘲笑した。
悲しくもなくうれしくもなかった。

「一つ聞く」

ルドルフの鼓膜を思いのほか優しい声が刺激する。
あまりのやさしさにルドルフが驚いたくらいだ。

「なんだ?」

ポケットから銃を取り出し、ルドルフは最終兵器の頭へと銃口をむけた。

「なにが知りたいんだ、恐怖神?」

「なぜ…なぜ逃げなかった?」

シエラ目の前で銃を突きつけられてもピクリとも反応せずに
眼帯で隠れている左目と右目でルドルフの目だけを見つめた。

「なぜ、逃げなかった…か…」

撃鉄を起こし、さらにシエラへと狙いを定める。

「俺は戦いには負けた。
 いや、我が艦隊…か。
 だが、連合郡自体は勝った。
 ただ、それだけのことさ…」

ルドルフは、そういって引き金を絞った。
故郷の自然が見え、妻と娘の姿がぼんやりと脳裏にうつった。

ドン!!

たった一隻だけのこった第十二艦隊旗艦、戦艦テンバリーナに銃声がとどろいた。
それは、終局の鐘でもあり火の海に響き渡っていった。





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~ Comment ~


ああ、艦長・・・・・・(つД`)゜・。・
君は漢だったよ。かっこよかったよ。うん、夜に読んでると目頭が熱くなりますね。

というか、改めてやっぱり戦闘っていいなあって思いました←
燃えます。最終兵器がとにかくかっちょいい☆
ネミエルさんが10話以降自信があるとおっしゃっていた意味がすごくわかりましたv

また読みに参りますね♪ それでは
#341[2009/11/07 01:48]  佐槻勇斗  URL 

NoTitle

やっぱりアクションシーンは燃えますな。

それにしても派手に壊したものですね。

最終兵器を名乗っているのに、シエラちゃんにはECMがついていなかった、というのはなんか不思議。

たぶんベルカ帝国は、交信に電波ではない、より進んだ技術による他のなにかを使っていたのでしょうね。だから電波妨害をしようという発想がなかったと。
(などと勝手に妄想を膨らませる男であった)
#224[2009/10/13 06:50]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

NoTitle

最後がね……もう、ね。

それまでの戦闘シーンが見事に書かれていたため、尚更最期のシーンが際立ったように思えます(´;ω;`)

うん、緊迫感とその結果。
とても引き込まれました!!
#223[2009/10/13 02:47]  鷹の爪痕  URL 

NoTitle

最近思うのが、自分視点の書き方はどうも他の人間の動きが説明しずらいというかなんというか・・・。

この場合、主人公の視界に入ることしか説明できないことになるらしい。

でも、上手い作家は、これを利用してなんかいい効果だしちゃったりするらしいんよ・・・・。

うむぅ・・・なかなか難しいもんだ。
いったいどうやってるんだか。
#222[2009/10/13 00:34]  そのちー  URL 

NoTitle

第十二艦隊…っ!! 艦長……っ!!
最終兵器・対・艦隊も圧巻の戦闘でしたが! ルドルフ艦長とシエラが対峙する場面の、あの静かな雰囲気がたまりませんっ!! カッコイイなあもうっ(*´∀`)σσσσ)´Д`*) ドルルルルルル・・・

メイナお姉ちゃんにも戦ってほしかったかも…と、ちょっとだけ思いつつ。
あああああやっぱりセズクが気になるぅうううううっ(((゚´Д`゚;)))

乱文失礼いたしましたっorz!
#220[2009/10/12 20:38]  卯月 朔  URL  [Edit]

すごいです!

今回は、たぶん、今までの連載も面白かったのですが、群を抜いて一番面白かったと思います。

ルドルフの想い、海の漢たちの想いが伝わってきて、胸が熱くなりました。
波音くんの戦い、人の生死に対する想いもきっちり描き込まれてあって、この手の作品にありがちな戦闘美化がなく、とても共感できる内容だったと思います。

これからさき、ますます期待しておりますのでがんばってくださいね♪
#219[2009/10/12 18:45]  三宅千鶴  URL 














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