Twilight of midnight

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いただきもの

蒼と仔猫と怪しい白衣

 蒼はいつも公園へ行く。散歩の途中で立ち寄るのだ。
 スキップしそうな軽やかな足取り。
 彼女は猫が好きだ。
 大好きと言っても過言ではない。むしろ言い足りない。それぐらい、彼女は猫が大好きだ。
 その公園には、猫が集まってくるのだ。
「うふふ」
 ノラネコからイエネコまで集まるその公園。だいぶ通い詰めた蒼に慣れたのか、猫たちは随分彼女に懐いてきている。
 そのなかに、とびきりかわいい猫がいる。
 薄茶色の毛並みがふわふわの仔猫で、目鼻立ちが整っている。恐らく雑種だろうが、とびきりかわいいことに疑いの余地は無い。
 その分警戒心が並ではない。カツオブシやニボシといったアイテムの数々を駆使してようやく、蒼の手からエサを食べてくれるようになった。
 恐らく、今日か明日にでも、撫でようとしても逃げなくなるのではないか、と蒼の口元はにやにやと歪む。
 だが、蒼が公園へと足を踏み入れたとき、彼女の表情が凍りついた。
 愛してやまない仔猫はいつものように公園にいた。
 だが、その仔猫は草むらや繁みに身を隠してはいなかった。
 怪しく佇む白衣の人物の腕に抱えられていたのだ。
「遅かったな」
 驚きに目を丸くして立ち止まっていた蒼に、その白衣は仔猫を抱いたまま声をかけてくる。
「待っていたぞ」
「……?」
 怪しい。
 怪しすぎる。
 蒼が怪訝そうな視線を向けているのに気付いていないのか、白衣は「ふっふっふ」と笑った。
 怪しさが加速していく。
 ここで蒼はこの白衣をスルーして逃げるべきだった。
 だが、その白衣が抱える仔猫。
 魅惑的に「にゃー」と鳴く仔猫。
 珍しく暴れもせず、白衣の腕の中で丸くなっているその仔猫。
 スルーするには、惜しすぎた。
「この仔猫に興味があるようだな?」
「……」
「触りたいか?」
「……」
 怪しい。
「この仔猫の肉球、触りたいか?」
「ッ!」
 その言葉は蒼の心臓を貫いた。
 肉球。
 それは蒼の猫への執着の大半を占める部位でもある。
 彼女は、ごくりと唾を飲み込む。
「……はい」
「よろしい。ならば取引だ!」


 学校からの帰り道、波音はさびれた公園を通る。
 名も知らぬその公園を、波音はその日もいつものように通り抜けて家路に着こうとした。
 だが。
「ふっふっふ。大人しく観念するといいッ!」
 白衣に眼鏡という、いかにも怪しげな人物が、少女を相手に不吉な笑い声を上げていた。
「……」
 今まさに、どこか茂みの奥、もしくは滑り台の上から「まてぇい!」と正義の使者が現れそうな雰囲気。
 日曜日の朝にやっているスー○ーヒーロータイム的な展開が、彼の目の前で繰り広げられている。
(スルーしよう)
 波音は持ち前の危機回避能力を駆使してその場を立ち去ろうとした。
 だが。
「ひ、卑怯ですッ!」
 白衣と対峙しているのが、見知った少女であればスルーするわけにもいかないだろう。
 たぶん。
「あの、蒼さん? なにやってんの?」
 恐る恐る声をかけると、少女はパッと振り向いた。
「え? あ、波音さん! いいところに来てくれました! 助けて下さい!」
 涙目で白衣の変人と向き合っていたのは、まぎれもなく陽天楼の副長である空月・N・蒼中将そのひとだった。
 その気になれば街ひとつをあくびしながら焼き払える少女は、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「こ、このひとが!」
 そう言って白衣を指差す蒼。
「ふっふっふ」
 妖しく笑う白衣に突きつけられた指には、「びしぃッ!」という効果音がついていないのが不思議なほどだ。
 いや、ついていたのだろう。
 ただ波音に聞き取れなかっただけで。
「この白衣が、どうしたって?」
 波音の促しに励まされたように、こみ上げる涙を堪えるようにして、蒼は高らかに言い放った。
「私に猫ちゃんの肉球をもきゅもきゅさせてくれないんです!」
「……」
「……」
「……えと、あれ?」
 指を突き付けたまま、蒼は小首を傾げた。
 突き付けられた白衣もなぜだか一緒に首を傾げている。
 だからと言って波音まで首を傾げてやる必要はない。
 代わりに口を開いた。
「それだけ、か?」
「は、はい」
「帰る」
「ちょっと待って下さいよ!」
 踵を返した波音を必死に引き止める蒼。
「あーのーなー」
 極めて迷惑そうな表情を貼り付けた波音。
「確かにあの白衣が抱えてる猫はすげーかわいいけどさ、だからってどうして肉球もきゅもきゅしなきゃいけないんだよ。別にもきゅもきゅしなかったからってなにがどーなるもんでもないだろ。どうしてももきゅもきゅしたいんなら、別の猫探せよ」
 舌をもつらせながらもどうにか三度も『もきゅもきゅ』と言い切った彼は、誰かから褒められてもおかしくはない。
 だが蒼はそんな波音に非難の視線を向ける。
「なんてこと言うんですか!」
 蒼はぐっと拳を握った。
「これは一期一会です! 肉球にもそれは当てはまるのです! 機会を逃せば、二度と同じ肉球にはめぐり合えないのですよ!」
「んな、大げさな」
「いいえ! その日の天気、気温、湿度はもちろん、そのネコさんの体調によって肉球の仕上がりは変化していきます! そのときを逃したら次はないんですよッ!」
「その情熱はどこからきた」
 波音はぐったりと肩を落とした。
「俺はこれでも忙しいんだよ!」
「レルバルともなれば、それは忙しいだろうな」
 一瞬の静寂。
「……え?」
「レルバルの手を煩わすまでもない。この件は私と陽天楼の副長とで話をつけるので、心配は無用だ」
 先ほどから平然と、波音を『レルバル』と、そして蒼を『陽天楼の副長』呼ばわりしているのは、子猫を抱きかかえた白衣であった。
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て!」
「なんだ?」
「おまえ、どうして俺が……というか、どうして蒼の正体とか知ってるんだ!?」
「どう、と言われてもな」
 白衣は真顔で首を傾げる。
「少し考えれば自明ではないか」
 軍事機密レベルの秘匿事項をあっさりと言ってのけた白衣は、淡々と手の中の子猫を撫で続けている。
 その様子を涎を垂らさんばかりに見つめている蒼を押さえつけながら、波音は声を荒げた。
「その『少し』の過程を言え、いますぐ!」
「面倒だな」


「なにやってるんスか、先輩」
 波音と蒼、白衣と猫の間に割って入ったきたのは、波音と同じ学校帰りの学生のようだった。
 というか、
「あれ、波音じゃん。ういっス」
 隣のクラスの顔見知りだった。
「よぉ。……っつーか、おまえ、この白衣と知り合い、か?」
 波音が謎の白衣を示すと、そいつは大仰にため息をついた。
「先輩。今度はなにやらかしたんスか。かわいそうに、女の子涙目っスよ」
「私が悪いわけではないぞ、後輩」
「これっぽっちも信用できないっス」
 そのやりとりを聞きながら、波音はぼんやり思い出していた。
 隣のクラスの誰かが、学校一の奇人である上級生におんぶに抱っこされている、と。
 あまり真面目に学校生活を営んできていなかった波音は、うっかりその奇人を今まで見たことがなかった。そう言えば、よれよれの白衣の下には波音の学校の制服ほ着ているようだ。
(『おんぶに抱っこされている』ってなんだよ、と思ったけどなぁ)
 確かに、波音が見る限りでは、この白衣の奇人はその後輩に全力で迷惑をかけ、世話を焼いてもらっている風に見える。
(つーか、どうして奇人白衣とは言え、同じ学校のヤツが俺とか蒼の正体諸々を知ってるかが問題なわけだが……)
「相手は戦艦の副官とは言え、女の子なんスよ。少しは自重してほしいっス」
(……ひょっとして、全校生徒にバレてんのか?)
 乾いた笑いしか出てこない波音。
 そこに、白衣がぐるりと視線を向けてきた。
「いや、そうではない。おまえがレルバルで、その少女が陽天楼の副官であると知っているのは私と後輩だけだ」
「……心ん中、勝手に読まないでくれます?」
「これはすまん」
 白衣は意外と素直に波音へ頭を下げた。
 そしてひとつ、咳払い。
 こほん。
「話が逸れたな、蒼中将よ! 取引を続けようではないか!」
 高らかに宣言すると、目に見えて蒼の肩がびくりと震えた。
「ひッ!」
「だいぶ怯えてるっスけど」
「おい、あんまり無茶さすなよ」
「なにが無茶なことがあろうか。私はただ、この可愛らしい仔猫を差し出す代わりに」
 白衣の腕の中で、丸まっていた仔猫が「にー」と鳴く。
 その声に飢えたような視線を向ける蒼。
「その代わりに、陽天楼の中を見学させろ、と言っているだけだ!」
 仔猫に向かって伸ばされていた蒼の手は空中でぴたり、と止まった。
 そして両目にはじわりと涙が浮かぶ。
「う、うぅー……。それは第一級の軍事機密ですぅ」
「そらま、猫ごときで軍事機密を外に漏らすとか、ないわな」
「う、ううううぅぅ……」
 だが蒼の両目は決壊寸前だった。
 彼女にとって、どんな拷問よりも辛い、らしい。
「先輩」
「なんだ、後輩よ」
「良心が傷まないんスか?」
「これも私の飽くなき探求心のためだ! 多少の犠牲は仕方あるま……むぅ、やはり若干胸が痛むな」
「先輩も人間だとわかってホッとしたっス」
「ならば、もうひと押し!」
「なに言い出すんスか、あんた」
「レルバルよ!」
「え、俺?」
 完全に傍観モードだった波音は突然白衣に名を呼ばれてぎくりとし、そして背中に走るのは完全に嫌な予感。
「全校生徒に君の正体を暴露されたくなければ、陽天楼への見学ツアーを蒼中将に申し込みたまえ。当然、それが却下された暁には、君の正体は余すことなく全てのものに伝わるだろう」
「……さすが、えげつないっス」

 波音の答えは迅速だった。
 蒼へ向けて深々と、長い髪が地面に着くほどに頭を下げ、
「蒼中将、どうぞよろしくお願い致します」
「え、ええー……」


 ベルカ超空制圧第一艦隊の旗艦である《ネメシエル》。 別名『陽天楼』の艦長であるナクナニアニューロ光AIは戸惑っていた。
『蒼中将?』
 艦内のスピーカーから出てくるのは合成された女性の声。いつもの冷静沈着な声音とは違うその様子に、蒼は少しだけ気分が良くなった。
 現在幸せの絶頂にいる彼女にとって、多少の気分の良さなど問題ではないのだが。
『一体なんの騒ぎだ、これは』
 さまざまなベルカの最新科学が惜しげも無く詰め込まれた世界最強にして最大の最強の超空要塞戦艦である陽天楼。
 その搭乗員は蒼以外にはいない。他に乗り込む人間はいない。
 はずであるのだが。
「ほう! ここはこうなっているのか。ではこの下は……ふむふむ」
「うわ先輩、勝手にいじっちゃダメっスよ。……あ、ほらここのネジを外せばカバーが取れるっスよ」
「なぁ、腹減らね? 俺、ラーメンライスと餃子ね」
「私はチャーハンと麻婆豆腐をいただこう」
「じゃあ……味噌ラーメン。もやし多めで麺はバリ硬で」
「にゃー」
「ええと、坦々麺と、この仔にミルクをお願いします。それにしてもこの肉球ッ! 素晴らしいですぅッ! もきゅもきゅぅッ!」
『……一体、なんの騒ぎなんだ、これは』
 陽天楼のつぶやきに答えるものは誰もいなかった。
「にゃー」
 仔猫以外は。
『いつからここは中華料理屋になったんだ……?』


 蒼中将、悪魔に魂を売る、の巻。  了





とりあえず色々あるのですが、まずここまでお読みいただきましたありがとうございました。
そして、

ねみさま! すみませんでしたッ! とりあえず謝っときます!

波音さんが難しいと知った2011年の梅雨、でした。
いつもの語り手ではなく、三人称にしてみましたが……あれ、難しいよ、このお方。
というよりも先輩と後輩ペアの筆が進みすぎるので、波音さんの語り口がなかなか切りだしにくかった、というだけのような気もしますが……。
やっぱりよそ様の主役級は扱いが難しいなぁ。
「ここ違うよ!」という点がありましたら喜んで修正させていただきますm(__)m
『蒼さんはそれほど猫が好きじゃないですよ』とか言われたら……どうしようかなぁ(^_^;)
しっかし、猫の肉球って、そんなに良いもんなんですかね?←マテ。

「蒼さんとネコバス」だの、「波音さんとストーカー」だのと言っておきながら、蓋を開ければ「蒼さん・波音さん+先輩後輩」になりました。
先輩と後輩はたぶん平衡世界の住人ってヤツで、いろいろパラレルな世界にいるんですよ。
だから波音さんが主役の世界にもいるし、別の話の世界にもいる……ということで、ひとつよろしくお願い致したいです。

そして、
蒼ちゃんだけがいれば動く戦艦≪ネメシエル≫に、他の人が乗るスペースが確保されているのか否か!←
そんなスペースない気がするなぁ……。
ねみさーん、艦内図をお願いしまーす(^_^;)
方々で言われていたように
「『陽天楼』って中華料理屋みたいだネ(*´∀`*)」
を、ネタにしてみました。
陽天楼のスペックがあれば、艦内で中華料理屋営業もできるのでは……?←


ここまでお付き合いありがとうございました。
さてさてねみさま。
こんなものでよろしければ、どうぞもらってやってくださいませぇm(__)m









ありがとうございましたっ!
いやはや、まさか先輩。
やらしいっ!
そして蒼さんあんたどんだけ猫好きなんだwww
俺、実を言うと猫アレルギーで。
動物が触れないんだ。
だからすっごくうらやましいぞ。
てか猫でお前陽天楼の中見せんなwwww
俺も考えてないのにちょ。
蒼さんのおばかーっ!

あと、先輩ネジ外さないで!
その中ちょっとやばいから!
ほんと、やばいから!
俺の秘密の何かが入ってるかもしれないから!

艦内図、がんばっております。
いずれ

「がむばった俺、7」で公開しようと思います。
そのときにどうかよろしくお願いします。

そして、ポールさん!
兄さんのせいで陽天楼=中華料理というわけ分からん法則が
なりたってるじゃないですか!
どうしてくれるんだぁっ!!


いえ、別にいいですよww
俺もそう思ってましたしw


それにしてもやはりコラボというのはいいですねぇ。
この前ポールさんの所ともコラボさせていただいたのですが
そのときも大塔高校が舞台でしたからねぇ。
文子ちゃんたちや先輩達、波音たちは案外
おんなじ街にすんでいるのかもしれませんねぇ。
またそんなコラボ書いてみたいなぁ。

おふた方書いてみませんか←


超空要塞戦艦 ネメシエル 陽天楼 ようてんろう 1624m  25000000t

超空城砦戦艦一番艦 ルフトハナムリエル 雷雲楼 らいうんろう 1512m 24000000t
超空城砦戦艦二番艦 アイティスニジエル 雹雲楼 ひょううんろう 1513m 24001000t

超空突撃戦艦一番艦 ヴォルニーエル  星夜楼 せいやろう 1421m 11600000t
超空突撃戦艦二番艦 ニジェントパエル 月夜楼 げつやろう 1421m 11600000t




さて、ミズマさん、次は↑を使って・・・冗談です。
本当にありがとうございました!
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ミズマさんへ

冗談ですよw
いえいえこちらこそありがとうございます。
#1649[2011/07/24 23:55]  ねみ  URL 

そのちへ

お前それが言いたかっただけだろwww
#1648[2011/07/24 23:54]  ねみ  URL 

こ、コレを使ってなにを書けと……ゴクリ。

ともあれ掲載ありがとうございまーす(*´∇`)ノシ
#1636[2011/07/24 20:52]  ミズマ。  URL 

俺の腐ったネバネバのスライムを触りたいか?
よし、ならば取引だ。
#1634[2011/07/24 11:33]  そのちー  URL 














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