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Twilight of midnight

怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第十一話

「しっかし、本当にこれであってんのかねぇ?」

そんな疑問を俺はぶつけられた。


しらねぇよ。
そう俺は言うしかない。
鬼灯のおっさんと連絡が取れればいいのだが
あいにく、ここは地下で戦場だ。
携帯の電波が届くわけがない。

「シエラ…シエラ…」

シエラと名をつけられた最終兵器は
自分の名前をなんども読んでうれしそうにニコリと笑うし、
重そうなパソコンをずっと脇に抱えながら歩いてくる仁も疲労が眼に見えてきた。
それに、俺もそろそろ疲れてきた。
任務開始が午前五時。
そして、今が午後一時だからかれこれ八時間はこの辛気臭い遺跡でうろちょろしている計算になる。
いくら、超古代文明の遺跡だといえ疲労をとる効果はないようだ。
あったらあったでおじさんたちのスポットになるんじゃなかろうか。

「……」

俺はもう何もいう気力すら起きないね。
人の死を目のあたりにしたというのもあるが、
終わりが見えない遺跡の旅っていうのも一枚噛んでいる。
いや、一枚どころじゃなくて四枚ぐらい噛んでるね。
そんなことを思いながらトボトボと歩く。
パソコンをいじりまわしながら俺の前を歩いている仁に呼ばれた。

「お、おい、波音!!」

地面に写る自分の顔を見ながらため息をついていると

「なんだよ?」

疲労も手伝ってちょっといらだった声になってしまった。
世に言う八つ当たりだ。

「この扉…みたことないか?」

なるほど見覚えがある。

「これは、僕の家の扉と酷似してるな」

そして「元だけどね」と付け加えるシエラ。
その声を聞いて、鬱病一歩手前になっていた俺もようやく顔を上げる。
そして、すこし驚いた。
いつの日か、シエラが俺を殺しに出てきた扉とそっくりのものが目の前にひろがっていた。
嫌な予感が頭を駆け抜ける。
そんなことを気にしないようにまるで獲物を狙う猫のような顔をして

「ここか…」

シエラは目をとじて呟いた。
今まで歩いてきた通路に分岐点はなく、その通路をさえぎるように直立している扉は
ここが最深部であることを示している。

「仁、また頼む」

「まかせとけ」

短い会話が終わったあと仁は扉を開けるためコードを差し込む場所を探し始めた。
が…

「必要ない」

そういったシエラに押しとどめられた。
自分の仕事をとられたという顔をした仁は不服そうな顔をしていたが
目の前で大口径砲に変わっていくシエラの右腕を見て納得したようだ。

「壁が邪魔ならこわせばいい」

はい、コレ名言ですよ。
戦闘機を破壊したときにつかったあの兵器だ。
対人用と対兵器用でこいつはレーザーを使い分けているようだ。
最終兵器は、可変式鋼鉄細胞という細胞で出来ているらしい。
思ったとおりに回路が組まれ、その結果思ったとおりの兵器が体から生える。
だが、それ以外は普通の人間と変わりないのだという。
つまり、転べば血が出る。
風邪もひく…らしい。
兵器も風邪ひくものなんだな。
兵器なだけに平気かと思っていたんだが。
だれかくだらなすぎってつっこんでくれー。
とかいっている間にレーザーエネルギー補給完了。
シエラの右腕は赤い光に包まれている。

「発射!」

レーザーが直視できないほどの強烈な光を放ち
爆発する、と思って地面に伏せた俺と仁は爆発によってふってきた鉄破片に
思いっきり背中を叩かれることになった。

「「いてーっ!」」

俺と、仁はナイスタイミングではもった。

「あのなぁ、シエラ。
 お前もうちょっと、加減ってものをだな…」

「違う」

「は?」

「僕じゃない…」

目を細めながら見ると、シエラの右腕はまだ赤く光ったままである。
つまり、まだ発射していない。
じゃあ、誰が―と言いかけた俺の前で火花が散った。
シエラが俺の前に立ちふさがり、左手のナイフで扉の中から出てきた
『何か』の攻撃を防いでくれたのだ。

「面倒なヤツが出てきた」

シエラは、簡潔にそう俺に言ってまた壁に張り付いとけという目配せをした。
それに素直にしたがう、俺&仁。
戦いのプロのそばにアマチュアがいたって邪魔になるだけだ。
シュッと、空気を切る音と共に扉の向こうから赤いレーザーが飛んでくる。
それを、ナイフから普通の手に戻した左手で軽く受け止めて横へ流す。
壁に光が吸い込まれシエラの横の壁が爆発する。

「出て来いよ」

シエラがそういって、扉の向こうへレーザーを発射する。
赤い閃光が走り、扉の中へと向かう。
扉の中のレーザーにあたった壁が爆散して、その破片をよけるために扉の中から
『何か』が出てきた。

「シ…エラ?」

俺は、思わずそうつぶやかずにはいられなかった。
そう、そこにはシエラがいた。
ただ、一つ違ったところがあり長髪のシエラと比べ短髪で運動系の女子って感じだ。
その短髪がしゃべった。
なにかで聞いていたのだろうか。
完璧な日本語で、だ。
何なんだよ、こいつらの語学能力の高さ。
俺も見習いたいぐらいだ。

「やっぱりFね。
 久しぶりじゃない?」

シエラと変わらないトーン。
ただ、男っぽい口調ではなかった。

「久しぶりだな、S」

そういって、またシエラはレーザーを放った。
それを、右手で受け止め、Sと呼ばれた女は笑った。

「あはははっ、久しぶりの戦いの臭いだわ!」

「上では、人間たちが戦争ちゅうだ、ぜっ!」

再び、赤いレーザーがひらめき、Sを狙う。
それを軽くよけ、Sは左手をナイフからレーザー砲へと変換させた。

「プロトタイプのくせにでしゃばんじゃねぇよ!」

「あんたは、自分の力を制御できないじゃない!
 だから、いっつもTに迷惑ばっかりかけて…
 私達三体の中で一番の出来損ない!!
 動かしちゃいけない『削除』のくせに!」

まて。
いま、Tっていっただろ。
まだいるのか…
最終兵器が…
それに、シエラが出来損ないか。
――かもしれないな。

「殺すぞ」

ごめんなさい。
シエラ様。
最終兵器を舐めてました。





閃光がきらめき、爆発音がわんわんと鳴り響く。
最終兵器どうしの戦いか…
見ているものを圧倒するね。
また俺は、Sとかいう最終兵器にベルカが滅びたということを伝えなきゃいけんのか?
とか思ってると俺の右手ギリギリのところを青いレーザーが通過する。
もう勝手にしてくれ…
俺は投げやりの気分で戦闘範囲を見た。

「ちっ…」

少々、Sが押されているようだ。
やっぱりシエラは強い。
というか、最終兵器同士が戦ってもまわりが壊れるだけで
最終兵器自体が全然壊れない気がするんだが…
シエラが今まで見たことのないような大砲に右腕を変えているのを見た。
そしてバシュルルル!と大きな音がなり、オレンジの閃光がSの足を貫く。

「うっ!」

小さく声をあげ、Sは足を押さえた。
大量の血が流れ出て、力が抜けたのかSは地面に落ちた。
シエラもSも、背中から金属の翼を生やし扉の中の広い空間で戦っていた。
それの決着が今ついた。
Sはオレンジの閃光に足をつらぬかれ、大量の血を出している。
筋肉はもちろん、骨まで貫通した閃光は壁に当たってもなお壁を貫き、見えなくなった。
どれだけ、強いレーザーなんだ。

「光波共震砲…か…」

「そうだ。
 我が祖国が完成させた最高傑作兵器だ」

シエラが、地面に降り立ちSにむかって歩き出す。
両手の武装を解除し、背中の翼をしまう。

「超空要塞戦艦の主砲の仕組みをマスターしたのね…」

そういってSはひざをついた。
着地したときにも痛みが走ったのだろう。
痛さで汗が出てきている。

「大変だったよ。
 まずは、力光学からはじめなきゃいけなかった」

俺と仁はもう何がなんだかわからないわ?という顔で聞いている。
なに、超食う要塞?なんじゃそりゃ。
デブとかなにかか。

「詳しくは後で話す。
 いまは、少し黙っててくれ。
 感動の再開なんだ」

そう俺に言ってシエラはSのそばにしゃがみこんだ。
主人に黙れ…か…。
感動の再開…ね…。
そうですか。

「ふぅ…」

まったく、逆に飼いならされている気がしてきたよ。
Sの傷はこげて、墨みたいになっている。
最終兵器でも痛みは感じるのだろう。
シエラが治療しようと傷をさわると美しい顔立ちが痛みにゆがんだ。
治療されながらSがシエラに話しかける。

「しかし、最後の最終兵器としてつくられたあなたがどうしてここにいるのかしら?
 ちゃんと、兵器庫をまもってなさいよ!」

その疑問は俺がお答えしましょうか?
はじめから尾ひれをつけてかたってあげますよ。
動きまで加えてあげますが。
どうでしょうか?

「姉さんこそ守ってれば?」

姉さんねぇ…
ふーん…もう驚かんぞ。
俺はもうこういうのには慣れっこだぞ。
仁はしっかりとびっくりしているようだがな。

「私は休みたいの」

任務を無視するのもどうかと思うが…。

「S…いや姉さん。
 単刀直入にいう。
 ベルカは滅びた。
 完璧にね。ロルワール家の予想は大きくはずれた」

シエラがそういうとSは目を大きく見開き小さい声をあげて

……泣き始めた。

「私の任務は…私の生きてる意味は…?」

デジャヴを感じるぞ。
猛烈なデジャヴを。
シエラもそう思ったのか、さりげなく微笑している。





しばらくして、泣き止んだSは俺達二人の方を見た。
姉妹だなと思えるぐらい似ている。
気になることが多すぎてすこし話を聞くことにした。

「えーと、Sでいいのか?
 あんた、シエラ…あぁ、Fのなんなんだ?」

読者の皆様も気になりますよね?ね?

「私か。
 私は、こいつの双子の姉だ」

どうも本当にありがとうございました。
どうりで似ているわけだ。
違うのは口調と髪形ぐらいのものだ。
体格、身長すべてがそっくりだ。
厳密にいえばSの方が背が少し高いか。
そんな風にじっくり見てるとSはなにやらシエラに耳打ちされた。
結構長い間しゃべっている。
またなにかいらないことをしゃべってんじゃないだろうな。
そして、俺の方をみて、ニコリと笑った。

「私も、あなたを守る任務につかせてもらうわ。
 よろしく」

生き方をお前もそこに見出したか。
やべぇ俺世界相手にしても負ける気がしない。
だが俺ははっきりいって一人あずかるだけで精一杯なのだ。
だから思いっきり反対することにする。
男としては嬉しいんだけどね。
おっと本音が。

「え、いやいやいや!!あんたなにいってんだ!」

男として嬉しくても正直迷惑である。
一人でもタダでさえ迷惑なのにもう一匹増えるだと!?
たえられない!!
詩乃や綾になんていえばいいんだよ!

「俺の家くるか?」

仁、お前の場合下心丸出しだろうが。
ほら、S怖がってるぞ。
よく見るんだ。
ふるえてるじゃないか。

「にしても、お前ら二人仲直り早すぎ!」

そう俺が言うと二人は顔を見合わせまた俺の方を向いた。
息もぴったりだ。

「あれは、準備運動のようなものだ」

「そうよ、準備運動のようなものよ」

あんた、足つらぬかれてたじゃないか。
今もまだいたんだろうな。
と、おもってSの足をみたら傷は綺麗に消えていた。
服に穴だけがあいている。
治癒能力も完璧だな。
なんなんだろう、この二人。
人間なのか?
そんな無駄なことを俺は一生懸命考えることにした。





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お邪魔します!

仁を恐れるSたんが可愛いですよぅぉぅ!!
でも無理やり触ったが最後、体全体が軽くチリとなって消えてしまいそうですけどね!
波音は……もう御気の毒様ですとしか言いようが……。
彼が強く、そして前向きに生きてくれることを祈ります……(汗)
#250[2009/10/19 20:45]  筱  URL  [Edit]

NoTitle

『超食う要塞』www

仁を強烈に警戒しているお姉ちゃんが可愛いです(´∀`人)❤
そしてどんな状況でも冷静なツッコミができる波音は、一人称主人公の鑑ですね! 『超食う要塞』がサイコー☆ たしかにそう聞こえるよね『超食う要塞』。ていうか卯月はどんだけ気に入ったんだ『超食う要塞』(爆)
#179[2009/10/03 20:00]  卯月 朔  URL  [Edit]

いいなぁ…

あぁ…ウチにも一人は欲しいなぁ…

力仕事もそれ以外もみんな忠実にこなしてくれそうだなぁ。
敵が来ても楽々と追い返してくれるし(笑)
#98[2009/09/06 13:52]  鷹の爪痕  URL 

NoTitle

レーザー光の速度は光だから秒速30万キロメートル。
光だもん、見えたときには当たってます(笑)。
よけられへん。
例のなんたらいうセンサーを駆使したとしても、光より早く動けるとは思えないしなあ。
これでアクションシーンができるシエラちゃんたちはすごいなあ(爆)。
#97[2009/09/06 09:20]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]














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