Twilight of midnight

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いただきもの

本の海と黒髪の君 (セズクさんのお話)

それは、人間兵器として彼が改造される、ほんの数年前の話。

 セズクがその日、図書館へ足を向けたのは本当に偶然だった。
 夏の日の午後、彼は辟易していた。
 完璧なブロンドに紺碧の瞳。バランスのとれた顔立ちと、均整のとれた身体つき。学業も運動神経も学年でトップ。人当たりの良い性格で友達は数え切れないほどいるし、彼の周囲に集まる女子も同じぐらいに数え切れない。父親と母親は、息子から見ても熱々で、びっくりするほど仲が良い。
 まるで神が贔屓をしたように、彼は完璧だった。


そんな満ち足りた生活に、彼は辟易していた。
 波風の立たない穏かな暮らし。
 飽き飽きしていた。
 折角の休日。晴天の空に太陽は高々と昇っている。いつもなら友人たちとどこかへ出かけているだろう。実際、誘いのメールは何件もきていたし、電話もあった。だがセズクはそれをことごとく断った。
 理由?
 そんなものはない。
 ただ辟易していただけだ。
 それでも外へ出ないのがもったいないぐらいの良い天気だったから、セズクは夏の午後の町を歩く。
 だが、
「暑い……」
 夏の午後は暑いものだ。
 涼を求めたセズクが図書館へと足を向けたのは、もしかしたら必然だったのかも知れない。

 古い紙の匂いがする。
 夏の午後だというのに、その建物の中は静寂が支配していた。
 気温も外より何度低いだろうか。ひんやりとした空気が火照ったセズクの顔を撫でる。更なる涼を求めて思わず手で顔を仰ぎたいところだが、それすら憚られるほどの静寂。
 入り口で突っ立っているのもなんなので、セズクは本の海の中へと足を進めるが、足音を立てることすら躊躇われる。
「……」
 居心地の悪い空気を感じながらも、外へと出て行く気にはなれない。
 あの炎天下の中に戻るのならば、せめてもっと涼んでからにしたい。
 セズクの胸元まである本棚がずらりとホール一面に並んでいる。その奥には、彼がどう背伸びをしても一番上の棚まで届かないだろうという背の高い本棚が立ち並ぶ。その全てに本が押し込められている。当然だが。
 誰もいないんじゃないかな、と思ったが時々本を抱えて本棚の間を歩く人を見かけた。
 彼らはまるで礼拝堂の中にいるように、一様に押し黙っている。
 本が、紙が、全ての音を吸い取ってしまったようだった。

 本棚の海を抜けると、こんどは無数の白い机と椅子が並んでいた。
 読書スペースだ。
 窓に面したそこはギラギラとした太陽光が差し込んでいて、今まで本棚の影の中を歩いてきたセズクの目に白い痛みが走る。図書館を利用している他の人々もそれは同じようで、そこで読書をしているのはほんの数人しかいない。
 直射日光が机に差し込み、白い反射を投げ掛けている窓際の席。そんな場所で白いページを捲って読書をしている変わり者がひとりだけいた。
 長い黒髪に映える白い肌。縁なしの眼鏡。その奥で文字を追うこげ茶の瞳。ページを繰る手は白く、細い。だが机に向かう肩は細いが華奢というほどではない。
 中性的な顔立ちだが、セズクと同じ年頃の少女だろう。
 というか、同じクラスだ。
「シャロン?」
 そして、彼の周囲に集まらない、数少ない女の子のうちのひとり。
 いつも教室で静かに本を読んでいたり、窓の外を眺めていたり。授業中はしっかり前を向いて、真面目にノートをとっている。
 セズクはそんな彼女の後姿を見ていた。授業中に。暇だったので。
 黒々としたクセのない髪が日差しを浴びて、きらきらと輝いていたっけ。
 いまも彼女の黒髪は夏の強い日差しに玉虫色に輝いている。その中で、彼女は黙々と文字を追う。
 日光とか紫外線とか気にする様子もない。ただ、本を読むことに没頭している。
 すべて忘れてなにかに没頭している。
 セズクの周囲にいなかったタイプだ。
 そう思うと、俄然興味が沸いてきた。
 名を呼ばれた彼女はぴくりと身体を起こし、それからこちらを向いた。深い茶色の双眸がセズクを認める。
「やあ」
 と朗らかに手を上げるセズク。
 その笑顔だけでそこらの女子ならば黄色い悲鳴をあげるだろう。
 だが彼女は軽く会釈をしただけで、視線をページに戻した。
「……」
 そして、再び訪れる静寂。ぺらり、とページを繰る音だけが響く。
「……」
 あげたままのセズクの手。彼は空しくあげられた手を見、わきわきと動かしてから下ろす。
 ……気まずい。
 ごほん、と咳払いをして今の嫌な空気を一掃。
 セズクは気を取り直して、シャロンの対面の席に腰掛ける。
 ちらり、と彼女の視線があがるがそれも一瞬。すぐに本に戻ってしまう。
「学校以外で会うなんて、初めてだね」
「……」
「なんの本読んでるの?」
「……」
「難しそうだね」
「……」
「本好きなんだ」
「……」
「……えーと」
「……」
 日差しの差し込むその一角だけ、図書館から静寂が取り払われている。一方的に、だが。
 それでも閉館時間が過ぎるまで、日が暮れてすっかり涼しくなるまで、シャロンは本から視線を上げることはなかった。

 次の休みも、セズクは図書館に足を運んだ。
 シャロンはあの席に座って、また小難しそうな本を読んでいる。
 彼は当たり前のようにその対面に座る。
「やあ、シャロン。今日もいい天気だね!」
「……」
 挨拶しても顔からあげない。なにを話しても読書をやめようとしない彼女。
 だがセズクは諦めなかった。
 休みの日は毎日図書館に通った。そしてシャロンの前の席に座って、あれこれ話しかける。
 例え彼女からの反応がなくとも、セズクは諦めなかった。もはや意地である。
 学校で話しかけるのは野暮というものだ。図書館で話しかけるということに意義がある、はずだ。
 というか学校ではいつもの友達に囲まれていて、シャロンに話しかけるきっかけがないというのが事実。朝の挨拶をすれば軽く会釈をしてくれる。休みの度に会っているんだから、その態度はちょっとよそよそしい、とセズクは思う。
 今日の休みもセズクは図書館へ向かう。
 だが、
「あれ?」
 扉は硬く閉ざされている。そこに「閉」と看板が揺れていた。
 休館日であった。
「そっかー……」
 頭をかくセズク。
 そういえば前にきたとき、休館日を知らせる張り紙があったっけ。
「どうしようかな」
 すっかり手持ち無沙汰になってしまった。
 夏の休日である。空は蒼穹。日差しは高い。
 以前なら友達とどこか出かけていたはずだが、最近はずっと図書館に通っていたから、なんだかそのリズムを忘れてしまった。
 手持ち無沙汰だ。
 ここ以外でシャロンが行きそうな場所なんて思いつかない。
 セズクは軽く息を吐いた。
 図書館の前はちょっとした公園になっている。木陰にベンチを見付けた彼は、カバンから分厚い本を取出す。 
 ずしりと重い本を開き、セズクは文字を追い始める。

 ふと気付くと、目の前に誰か立っていた。
「!?」
 びっくりして顔をあげると、そこにはシャロンが立っていた。
「うわ、びっくりした」
「……」
「今日、図書館休みなんだってね」
 ははは、と笑うセズク。
 図書館以外で差し向うなんて、なんだか照れてしまう。どことなく緊張する。
 だから突然シャロンが口を開いたときは、ものすごい驚いた。
「……それ」
「ん、なに?」
 思わず声が裏返るぐらいに。
「私が前に読んでた本」
「え、あぁ、うん! なにをそんなに一生懸命に読んでるんだろうと思って。図書館で借りてみたんだ」
 セズクが読んでいた本は『幻想の中のネメシエル?幻の帝國?』というもの。どうやら世界の口伝を集めたものらしいのだが、ベルカとかネメシエルとか聞いたことのないような名前がたくさん出てくる。
 その本が発禁処分を受けていて、本来ならばこの世にあってはならないものだということをセズクはそのときまだ知らなかった。
「難しくって全然進まないんだけどね」
 とうとう話しかけられた!
 セズクはうかれている。だからシャロンが顔を微妙にしかめたことに気付けない。
「なんでそんなことするの?」
「きみに興味があるから」
 即答するセズクに、対するシャロンの声は硬い。
「それはただの好奇心だわ」
「え?」
「あなたが私に興味を持ったのは、あなたの周囲にいままで私のようなタイプの人間がいなかっただけでしょう。迷惑なの。これ以上付きまとうのはやめて」
 捲くし立てる声はとても抑えられていたが、それがかえって彼女の不快感を強調している。
「つきまとってなんか」
「違うって言うの? 毎回毎回ひとが本を読んでるのに邪魔してくるのに。私があなたになにかした? なにか言いたいことでもあるの?」
 シャロンの茶色い瞳には反抗の色が灯っていた。
 セズクはその色に息を呑む。
「僕は、きみの、邪魔をしたかったんじゃない」
 搾り出すように言葉を紡ぐ。
 心の中から自分の気持ちを拾い集める。
 そうだ、邪魔をしたかったわけじゃない。
「僕は、きみが――……」
 セズクが答えを掴もうとしたとき、シャロンは無常にもピリャリと言い放つ。
「好奇心は好意とは違うものだわ」
 強い目だった。
「あなたのそれは好意とは違う。勘違いしないで」
 絶対の否定。
 シャロンの長い黒髪が夏の風に揺れている。彼女の瞳は揺らがない。
 あぁ……。
 真正面からその瞳に射抜かれたセズクは、思わず声を漏らした。
「綺麗だなぁ」
「……私の話、聞いてた?」
 怒声を孕むシャロンの声も、セズクの耳には入らない。

 最後まで、シャロンは頑なにセズクを否定し続けた。
 側にいたい。ずっと見ていたい。きみが大好きなんだ。
 あんな風に真っ直ぐに見つめられて、その視線で僕の胸は貫かれてしまったんだ。
 言葉を重ねてもシャロンは首を縦に振らない。
 あの日もそうだった。
 十年以上続いていた帝国郡と連合郡との戦いなど、自分たちには関係のない話だと思っていた。だからその休みの日も、シャロンとともに図書館にいた。本を読む彼女を見て、自分を見てくれるまでいくらでも待とうと思っていた。
 いつまでも、待てると思っていた。
 だが、現実は容赦なくセズクを襲う。
 帝国郡からの攻撃を受け、セズクの住む町は壊滅する。
 攻撃を受けたあの日。
 セズクの家族を、友人を、そしてシャロンを蹂躙した悲劇の日にも、彼女の側にいた。
 爆弾を受けて粉々に消し飛ぶシャロンを間近で見ていた。最後まで彼女は笑いかけてすらくれなかった。
 ただ、最後のあのとき、セズクへと手を伸ばし、彼の名を呼んでいたような気がする。
 いや、呼んだと確信する。
「それぐらいは許してくれるよね」
 でもたぶん、シャロンはそれすら完全に否定するだろう。その姿が容易に想像できる。
 だが、それを確かめる術はもうない。
 広々とした草原に、規則的に白い石が並んでいる。
 そこは墓地であり、墓標だった。
 真新しい墓標の前に、セズクは佇む。
 あのときの彼よりもだいぶ背が伸びた。もう何年たっただろう。
 でも、痛みは消えない。
「あなたのそれは恋なんかじゃない、ってキミは言ったけど」
 セズクは墓標に語りかける。
 中身のない、墓標に。
「この痛みには、じゃあなんて名前がつくんだい」
 ぎゅっ、と胸元を握り締める。そうしないと、痛みで身体が張り裂けてしまいそうになる。
「きみがいなくってこんなにさみしいんだ。……さみしい。さみしいよ、シャロン」
 嗚咽にも似た声だが、涙は流れない。
 とっくの昔に枯れ果ててしまった。
「胸が引き裂かれそうだよ。キミがいないのに世界が回るなんて、僕はおかしくなりそうだ。
 ――だからせめて」
 連合郡の軍服に身を包んだセズクは強く心に誓う。
「せめて、きみを殺したヤツラに、僕の痛みを思い知らせてやろうと思うんだ。いいだろう、シャロン?」
 あのときと同じように、夏の風が駆け抜けていった。


 I miss you. 了



お疲れさまでしたー!
セズクさんのその後が気になるアナタ、いますぐねみさま宅で『怪盗な季節☆』を読もう!
立派なガチホモになった彼が確認できますよ☆

蒼さんの話をまた書くぞ、と思った途端に、長編『怪盗な季節☆』(注・そこに蒼さんは出てきません)を読み出し、読みきった私の脳内では、
「6000hit再には、波音とセズクのガチBLを書こう!」波音さんは『怪盗な季節☆』の主人公です。健全な男子高校生。
と決定していたのですが、さすがに本家に捧げる話でBLはまずい。非常にまずい、と思いなおしまして、セズクさんのお話になったわけです。
……彼の過去って、自分でちょっと喋ってる(第22話参照)以外にはどこにも出てきてません…よね?
既出だったらどーしよう。ごめんなさい(;´Д`A 捏造しました。

「改造される前は女の子大好きだったし彼女もいたんだゼ☆」というセズクさんの台詞より妄想したわけですが、
……シャロンちゃん、彼女じゃないしwww 頑なに完全否定されてるしwww
思い出を美化しすぎていると思うのです。
セズクさんはいいとこのぼっちゃんだと勝手に設定。
世の中の悪意にまだ出合ってないんじゃないかなー。押し付けの好意は迷惑ですね。
本読んでる最中に話しかけられるとか、もう極刑で良いと思うの。←

シャロンちゃんは波音くんに瓜二つだという密かな設定があります。……いや、過去話なので波音さんの出番がなく、比較できなかったので披露できなかったということなのですが。
セズクさんは失った恋人(仮)に瓜二つの波音さんに恋したようですね。んで、今度は失いたくない、ということで身を挺して守っていたりする……わけです? どーなんですか、その辺り? ほんとに、セズクさんは波音さん守ってる、で良いのかなぁ。今後、やっぱり裏切ったりしない、ですよね? でもラスト付近で死んじゃいそうですよね、セズクさんって。←

最後の独白、「仇をとる」ではなく「僕の痛みを思い知らせる」というのがポイントですね。極めて利己的ですね。
波音さんと出合って、自己犠牲の精神を知った、とかだと良いと思います。


はい、ここまでお付き合いありがとうございましたー<(_ _*)>


……え、「蒼さんの出番は?」ですって?

本の題名に出てきたじゃないですかwww←

……いやもうほんとにすいませんでしたー!(つд・)





ミズマさん、本当にありがとうございました。
僕、コレ読んだとき

うはwwwwセズクwww
テライケメソwww

って思ってしまいました。
シェロンさんは波音と瓜二つ(逆?波音がシェロンに瓜二つ?)
というなんとも面白い設定を取り入れてくださりありがとうございます。
良いアイディアです、ひらめきました。
またセズクさんの過去をそのうち書くことにします。

お返しは仁の話ということですが……仁?
仁でいいんですか?
仁の話……んー……仁……ですか。
おっさんでも良いということですが……迷いますね。
とりあえず、仁の話をがんばって書いてみますね!
では、本当にありがとうございました。
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~ Comment ~


ミズマさんへ

べ、別にいいですよw
俺は別に全然構いませんw

むしろどうぞw←
#1288[2011/02/09 22:00]  ねみ  URL 

ポールさんへ

書かないの!?
ごほん。

か、書かないんですか・・・。
そうですか・・・寂しい・・・。

書きましょうよー。
ねぇー、ポールさんー。

蒼さんも入れて書きましょうよー
#1287[2011/02/09 22:00]  ねみ  URL 

……本家さまの所に載ると、やっぱし照れますなぁ(^_^;)

じゃあ次回は波音さんとテライケメソ・セズク氏の(やや)BLを進呈……できるわけないですよねッ!
#1277[2011/02/03 07:48]  ミズマ。  URL 

そうか……セズクと波音でガチBLをね……。

じゃあわたしはシエラとメイナで18(書きませんったら書きません!)
#1275[2011/02/01 18:32]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]














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