Twilight of midnight

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怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第五九話

夢の中は闇と赤一色だった。
赤く燃えた大地が唯一の光となって闇を裂いている。
巨大な艦がその上で旋回しながらレーザーの雨を降らせているのを見て
またこの夢か……と脱力した。


夢と分かっていてもこんなのを見続けるのは嫌な気分だ。
宙に浮いたまま何も出来ないし。
ただ巨大な艦が都市を焼いていくのをぼーっと見続けるのは苦痛でしかない。
どうせ一週間もあるんだ。
この夢の中を探検してやるさ。
それぐらいの心意気がないと正気を保っていられそうになかった。
おもむろに景色が歪み今度は海の上だろうか?
青い海と白い雲とが支配する空間になった。
青の上に新品の消しゴムほどの鋼鉄の箱が浮いていた。
その上にごてごてと飾り立てるように艦橋構造物や砲塔がくっついている。
それが十ほどあつまりその砲口を空へと向けていた。
本来なら鼓膜が破けるほどの爆音がして衝撃波で切り裂かれるほどの近いところを
大量の鳥――攻撃機が群れを成して消しゴムへと向かっていった。
消しゴムから大量の火矢が飛び出し鳥が次々と火に染められていく。
主翼が捥げきりもみしながら海面に落下して盛大な水柱を空に起立させて行く。
それが五分ほど続いただろうか。
鳥が負けを認め百八十度反転して白の彼方へ消えていく。
ゆっくりと今度は消しゴムが青い海面に白い軌跡を残して遠ざかっていった。
再び景色がぐにゃりと歪みしばらく不思議な模様が支配する。
万華鏡に無理やり目を当てられ他人に回されているような気分だ。
いい加減酔ってきてうんざりする。
エチケット袋欲しい……。
辺りを見渡すが当然のようにあるわけがない。
もう少しで臨界点を突破する直前に車の中の光景が像を結んだ。
黒いシーツに低い天井。
見たことがある。
確かに俺はここにいた。
右腕の同じ血を持った生命体の温かさ、笑い声。
遊園地のマスコットの人形、光る腕輪、ポップコーン。
夕日、シートベルト、母さん、父さん、姉ちゃん。
俺は……。
自分の体を見下ろした。
まだ小さい時の体……。
まさか……!

「海音、晩御飯は何が食べたい?」

この会話。
母さんが姉ちゃんに尋ねた……『あの時』の……会話。

「父さん的にはハンバーグがうれしいなぁ?。
 はっはっは!」

忘れていたはずの父さんのドラ声が車内を揺らした。
やめろ。

「波音は何が食べたいの?」

姉ちゃんの……忘れもしない目の輝きが俺をまっすぐに射た。
俺はここで「パパと同じハンバーグがいいなっ!」と答えたはずだ。
やめてくれ。

「そうか、ハンバーグがいいんだね??
 やっぱり父さんとおんなじだね?!」

意地悪そうに笑う姉ちゃんの顔が凍りつく。
確かこの後は……やめろ、やめてくれ。
赤信号で止まっている車に真正面からトラックが……。

「皆逃げてっ!!」

こう言いたかった。
だがこの時も過去と同じく声にならない声が恐怖に捻じ曲げられ出なかった。
頭を母さんと姉ちゃんに抑えられ、抵抗する間も無く座席の下に押し込まれる。

「うわぁああっ!!」

父さんの悲鳴が鉄と鉄とがぶつかりひしゃげる音に混ざり消える。
粉々になったガラスが車内を飛び交いトラックから剥がれ落ちた鉄板が
父さんを……母さんを……姉ちゃんを……砕いた。
飛び散ってきた脳が……血が……手に……顔に……。
遊園地で買ってもらったジャムポップコーンが違う赤に染まる。
ジャムのように澄んだ綺麗な赤ではなうくどろっと……赤黒い……。
人形が……赤く泣いている。
………………。
ぐにゃっとまた視界が歪んだ。
夢の中だというのに心臓がバクバク胸板を打ち目を覚まそうともがく体が
再び泥沼のような夢の中に突っ込まれ体を脱力させる何かがまとわりついた。
頬に液体が流れていた。
涙だった。
まぶたを開けることすらためらわれるほどの何かは徐々に体から抜けていった。
だが俺は目を開けなかった。
また嫌な物を見てしまいそうな気がして開けるに開けれなかった。

「永久……君?」

「……園田か。
 何かようなわけ?」

目をつぶっていても声は聞えてくるらしい。
当然といえば当然のことだ。
今よりも格段に幼い声をしている俺の親友の声が耳に入ってきた。

「……俺と親友になってくれない?」

小学校一年生の昼休みだったと思う。
いつも通り外でぼーっとしていようと席を立とうとした。
そうしたら園田仁が話しかけてきたのだ。
仁はたくさんの友達がいてクラスの中心的立ち居地にいた。
それが無口でマイペースな俺に話しかけてきたのだから皆びっくりしただろう。
でも仁の一言があったから俺は一人から逃れることが出来た。
悲劇の主人公気取ってるみたいだなー。
別に同情を誘おうとかしてるわけじゃない。
俺は悲劇の主人公でもなんでもないからな。
事故で両親と姉ちゃんを失い、俺は鬼灯の家に引き取られた。
何でも親達は中学時代からの親友同士だったらしく俺はスムーズに鬼灯家の一家に加えられた。
一人で住むのは寂しいだろうと。
両親の残した遺産をごっそり持って行き音信不通の親戚とは違い
俺を引き取ってくれた鬼灯家の人たちは俺に愛情を惜しみも無く注いでくれた。
俺は詩乃と小学校まで一緒に過ごし、中学校に入る頃に
自分の唯一残された家に帰りそこで暮らすことに決めたのだ。
その時代ぐらいからだろうか。
事故で頭を打ったのかそれとも同情はいらないと変に体を鍛えた結果
総合体育全国大会で準優勝という輝かしい成績を取ってしまったのは。
その次の日に、おっさんから今の『仕事』を頼まれるようになったのは。
初めはドキドキだったものの慣れれば大胆になっていった。
意味を調べようと書いておいた単語の紙切れを落としたのも大胆になりたての時だった。
そのおかげで意味の分からない名前を世間から与えられたりしたものだ。
そう、『レルバル』という名前だ。
今なら分かる。
『レルバル』はベルカ世界連邦帝国の首都の名前であり『永遠』という意味。
まぁそれはとりあえずおいておく。
横のゴミ箱にな。
正直いってこの名前は黒歴史なんだ。
あまり触りたくない。
何度か捕まりそうになったことも多々あったが何とか危機一髪で逃げ出せていた。
それは仁がメンバーに加わってからも同じだった。
そして何の縁やらシエラの眠る遺跡を開けちまったんだ。
後はもう言わなくても大丈夫だろう。
口ではいやいや言っているものの、内心では同じことの繰り返しの毎日が
終わる音を敏感に感じ喜びすら沸いていた。
もう過去は見たくない。
まっぴらだ。
シエラと関るようになってからよく聞き、見るようになった物がある。
それは

「伝説……か」

心の中でその伝説を唱えてみる。

大切なものが消えるとき
 三つの死は姿をあらわす
  死は力を使い地上を無に返す
   死は鬼神となり
    恐怖の中で消えていく
     大切なものを失った悲しみとともに

母さんにもよく読んでもらったものだ。
『騎士団の栄光』。
誰もが知っている童話。
今聞いたはずなのに母の声はどんなのだったのか。
思い出せない。
思い出そうとすると頭に映るのは事故の映像。
赤いポップコーン。
砕けた肉親の……。
またブルーな気持ちがこみ上げてきた。
悪い癖だ。

「大丈夫だよ」

頭を抱えていると今一番聞きたくない声が赤いポップコーンを消し去った。
夢の中にまで付きまとってくるというのか、お前は。
いい加減にしろ。

「ね、マイハニー」

うるせぇ、飛行機に轢かれておっちね。

「ひどいなぁ波音は♪
 まぁ飛行機に轢かれたぐらいじゃ死なないけどね?♪」

モドキだもんな。
からからと笑うセズクの隣で

「波音、一人じゃないんだぞ?
 何にも一人で抱えるんじゃなくて相談してくれよな」

中学校時代の制服に身を包んだ仁がにかと笑って俺に親指を立てた。
なんていうか………ありがとうな。
まったくこのカプセルってのは悪夢とかを見せる何かか?
出来るなら良い夢を見せてくれたっていいじゃないかよ。
贅沢か?
最後の方はいい夢だったと思うけどよ。

ジリリリ……。

小さくなっていたそれは徐々に大きくなっていく。
目覚まし時計のようにしつこく、かつ長く。

ジリリリリ……。

わかった、わかったよ、目を覚ますよ。
……さて、行きますか。
右手で目元をごしごしとこすり涙の跡を消した。
仁やシエラたちに笑われないようにしないとな。
俺が泣くなんてみっともないだろ。





重たかったはずのまぶたが開いた。
黄色い液体がカプセル内に充満しているのが分かる。
おそらく生理再生水とかいうのだと予想する。
釜の底が抜けたような間抜けな音がして徐々に水面が下がってきた。
足元にある排水口から小さな渦巻きが出来て生理再生水が搾り出されていく。
思ったよりも静かに蓋が開き外気がひんやりと体を包んだ。

「おはよう、レルバル。
 お目覚めは最高か?」

白衣に身を包むシンファクシが俺にタオルを差し出していた。
タオルを受け取り頭を拭き、すごい速さで前に巻いた。
これでも十六の思春期真っ盛りの少年なんだぞ。
恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。

「脳波や体に異常は無し。
 神経不接合の心配も無し。
 最高のお目覚めだな」

ボールペンを持った左腕で右手に持ったボードに書いていく。
そういえばこの一週間でシンファクシはイメチェンしたのだろうか。
眼鏡かけてないし少し背が伸びただろうか。

「シンファクシ元帥、背伸びました?」

女の人にこんなことを聞くのはどうかと思うが……。
疑い始めるとキリが無く心なしか口調まで違ってる気がしてきた。
だってほら、シンファクシって

「?です。
 ??ます」

口調だったじゃん?

「私か?」

ボールペンの頂点を押して芯を引っ込める音が聞えた。
ボードを机の上に置き、腰に手を当て鼻から息を吐く彼女。

「私はシンファクシじゃないぞ?」

わーお、お手上げ。

「私はシンファクシの妹、ラフファクシ。
 あ、別に覚えなくて良いから」

シンファクシにラフファクシですか。
舌を噛みそうな名前だことで。
ラフファクシは胸ポケットに入れたライトを右手に持ちくるんと回した。
スイッチを入れ俺のまぶたにをこじ開け光を当ててくる。
瞳孔の動きでも見ているのだろうか。
普通にまぶしい。

「反射神経異常なし……と。
 もうすくセズクが迎えにくるはずだ。
 それまでのんびりしててくれ。
 あーどこかおかしいところはないか?」





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良いお年を♪

こんにちは♪

年の瀬ギリギリの訪問になってしまってごめんなさいです!

今回は波音くんの過去がリアルに描写されていて胸を打たれてしまいました。
これはものすごいトラウマですよね。
そんな心の傷を抱きながらも今の仲間たちとがんばる波音を来年も応援したいと思います♪

今年も大変お世話になりありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします♪良いお年をお迎えくださいね~♪♪
#1212[2010/12/31 16:38]  三宅千鶴  URL 

ガム噛むラフファクシ博士(はくし)。

……早口言葉(笑)。
#1207[2010/12/27 19:18]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]














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