Twilight of midnight

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怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第五五話

銀のかけらとなったニセは次第に小さくなり――消えた。


それを見届けた後すっと思考回路が途切れる。
体が安息を求めているようだった。
少しぐらい別に良いよな……。
心の中の小さなささやきに負けそうになったとき背後の壁、一つ向こうでまた爆発が起きたようだった。
まだまだ続くであろう爆撃の音。
このビルに何発かは爆弾が当たっているだろうがすべて装甲が跳ね返しているのか損傷は受けていないようだ。
防音効果などもかねているこのビルの中にいると爆発音が子守唄のように聞えてくる。
次第に闇に沈む視界。

「波音!」

幻聴も聞えてきやがったか。

「しっかりして!ねぇっ!!」

ほとんど感覚が残っていない頬をぺしぺしとはたかれた。
ぼやけた視界にうっすら見える赤紫の瞳。
メイナか。
今頃助けにきやがって……。
にやりと笑い返すつもりの筋肉がこわばった。
キラキラと輝く銀のアレは……。
メイナの後ろで散ったはずのニセが集まって――?
俺に気を取られて気がつかないのか、メイナは。

「あ……ぇっ……」

喉に力が入らない。
っていうか、駄目だ、眠い。
まぶたにトン単位の錘をつけられたようだ。

「メ……うし……」

くそっ!声が出ねェ!
ニセがにたーと嫌な笑いを含みながら右手の銃口をメイナに向けた。
乾いた発砲音とともに巣穴から飛び出した龍はメイナの体細胞を切り裂く殺戮生物となりメイナを襲う。
ゼロ距離と言っても良い距離を駆けた龍は一瞬で勢いを失い白い硝煙を噴き上げる鉛に変わった。
その鉛をメイナの右人差し指と中指がはさんでいた。
龍から鉛になった哀れな物体を床に捨てざっと立ち上がる最終兵器は

「ZiΦψple」(邪魔)

逃げようとしたニセの首筋を右手で掴んでいた。
そのまま右手の先に光を集中させる。

「Sienpnimin」(久しぶりにつかうけどねぇ)

メイナが微笑し次第に光がニセの体を浸食しはじめる。

「Xm……!   (ッ……!
 ηi‡en!?」  そん……なっ……!?)

ニセの歯の隙間からかすかに漏れた空気と言葉を最後に光がニセを包み込む。
雷のように光が消えたときニセはひとかけらも残さず分解されていた。
俺がこれだけ負傷して苦労した相手を瞬殺。
初めからそうして欲しかった。
脳内に浮かぶメイナの姿が蜃気楼のように揺らぎ、崩れる。
暗い部屋の中網膜に残る光を最後に俺は意識を手放した。





「大丈……で…………?」

「分か……!
 まだ……は……!!」





「は……ん!!
 目……っ!!!」

何だこの声。
俺は……永久波音だ。
一六才大塔高校一年D組。
身長一七二センチ、体重五四……だっけ?忘れた。
突然だが体が重い。
トンからキロ単位になったまぶたをこじ開け太陽の刺すような光にまた目をつぶる。
窓から溢れる太陽光を伝に薄目で辺りの様子を伺った。

「あ、起きた?」

そんな言葉と一緒にぬっと目の前一杯を占めたのはセズクだった。

「……あ………」

憎まれ口をたたこうとしたものの肺から搾り出された空気は声帯を震わせることなく口から漏れた。
自分の衰退ぶりに逆にびっくりする。

「とりあえず二日間ぶっ続けで寝てたね。 
 おはよう、夕方だけど。
 ここは帝国郡本部……つまりアフリカ」

アフリカ?
アフリカ大陸ってことか。
クーラーが効いているからか、南半球だから冬だからなのかは知らないが小奇麗にまとまった部屋は少し肌寒い。

「み……ず……水……くれ」

やっと出たかすれ声を聞き取ったセズクが水差しの水をコップに入れて持ってきてくれた。
右手で受け取ろうとしたがピクリとも動かない。
感覚からして包帯でぐるぐるに巻かれているようだ。
やっぱり重たい左手を差し出してコップを受け取り一気に水を体に流し込んだ。
っ!?

「げほっ……げほっ!!」

気管に入った。
むせた。

「急ぐからだよ……。 
 大丈夫かい?」

涙目になりながらコップに残った水を飲む。

「ふー……」

体中にみずみずしい……水だから当然だが水が行き渡る。
落ち着いて状況を把握する。
上下ともパジャマ一枚……。
パンツもシャツも着てないじゃないか俺、やばいじゃん。
純白の布団の上で薄いピンクのパジャマを俺は着ているのだ。
それは良いとして窓の外に広がる大基地の方に目を奪われた。
ずらっと並ぶ戦闘機達。
広大な滑走路。
港に浮いている城のような戦艦、空母。
空を忙しそうに舞っているヘリコプター。
砂埃を上げながら進んでいる戦車。

「本当にここがアフリカ……なのか?
 いったい何が?
 てか俺は何でココに?」

次々と飛び出す質問を笑顔で受け取り水差しに追加の水を入れ
赤く熟したりんごを手に取り剥きながらセズクが答えた。

「覚えていないかい?
 ESSPX細胞の塊のヤツのこと」

ニセのことか。

「覚えてる、忘れるわけないだろ。
 ってか知りたいことが多すぎる。
 まずなんだったんだ、あいつは」

戦闘機のエンジンから発せられる轟音が病室内を揺るがした。
サイレンが鳴りスピーカーからベルカ語が流れている。
六時になったから総員飯だ!
そんな感じのことを言っているみたいだ。

「落ち着け。
 答えはそう簡単に出るもんじゃない」

りんごを置いて俺の鼻をふにっと押すセズクはにっこりと笑いながら手を拭いた。
りんごくれないの?
剥いたのに……くれないの?

「さっき言った通りさ。
 ESSPX細胞――可変式鋼鉄細胞。
 それが連合郡の奴らの爆撃の振動で……」

「ちょっと待った。
 やっぱりアレは連合郡の仕業なのか?」

セズクの説明をさえぎる形で質問を差し込んだ。
それに嫌な顔一つせず、いわなかったかな?と小さく呟いたセズクの口がりんごをかじった。
結局俺にはくれないのかりんご。

「そうだよ。
 あ、りんごおいしい。
 ……連合郡が自分の都市を爆撃した目的ははっきりしないがおそらく金だろう。 
 年々減らされる軍事費アップの要求のために国民の目を欺き予算を増やす算段のはずだ」

黒い小さな種粒を皿の上に吐き出し芯以外を失ったりんごがゴミ箱に落ちていった。
なんという速さでりんごを食べるんだこいつは。
セズクは、再びナイフを手に取り今度は梨を手に取るとナイフの刃を器用に使いながら皮をめくっていく。
ある程度皮を剥いてしまうとそのまま梨に意識を集中させたまま口を開いた。

「帝国郡は爆撃機を持っていないんだよ。
 まぁ持っていないというか持てない……とでも言うべきか。
 あまりにも技術が足りないもんでね……。
 っと話がそれたね。
 それで爆撃の衝撃で戦闘意志が眠っていたESSPX細胞の破片を目覚めさせたんだ。
 戦うためだけに生まれた細胞だからね。
 そして――」

「そのESSPX細胞が俺を襲ったと。
 なるほど理解した。
 で、なんであいつが俺と同じ姿に形を変えたんだ?」

一番言いたかったところを言われたのか、少しげんなりしたセズクは梨を剥く手を止めた。
ナイフを静かに机の上に置き布巾で手についた汁を拭う。

「おそらく一番近くにいた有機生命体――つまり波音の姿を真似ただけだと思われるんだ。
 仮に波音じゃなく、僕がいたら多分僕の姿になっていただろうね。
 ちなみにあのESSPX細胞はシエラのなんだよ?
 知ってた?」

りんごか梨食ってなくてよかった。
でなけりゃ盛大に布団の上にぶちまけている所だった。
窓の外ががやがやと外が騒がしくなり米粒よりも小さな軍服を着用した軍人が群れを成して歩いていた。
おそらく食堂で今日も忙しかったなーと語るんだろう。

「あれ?気がつかなかったのかい?」

よく思い出してみる。
シエラの鋼鉄の翼を。
青い線がどくんどくんと……たしかにニセにもあったな、そんな青い線が。

「あー……」

「納得したかな?
 あのESSPX細胞はハイライトでシエラがリモコンで
 引きちぎられた部分を培養液に入れて保存していたものなんだ。
 本物のESSPX細胞が連合郡に渡ったりしたら最高にフェスティバルなことになるからね。
 ジョンが鬼灯のおっさんに預けたんだ」

ジョン……。
多分俺はお前を少し嫌いになった。
心の奥で。

「ソレが今回のあいつ……か」

目をつぶると思い出すニセの顔。
怖かったというよりも命を拭い去るという目的のためだけに動く殺戮兵器。
ばらばらになったとしても再び結合し戦う。
キリのない永遠の戦いの火種。

「そう。
 まぁとりあえず右腕の銃創。
 肋骨二本にヒビ。
 全身打撲。
 しばらくゆっくりしておくんだね」

梨の音がしゃりっと病室に響いた。





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~ Comment ~


千鶴さんへ

セズクさんは久しぶりの出番で張り切っているのです。
だからキッとクールなんです。

そうなんですニセはシエラの細胞が暴走してそうなったのです。納得していただき嬉しい限りですw
#1166[2010/12/05 14:41]  ねみ  URL 

ポールさんへ


流石にそれはしないっすw

ポールさんはそんな憂鬱な物語書きましたっけ?
あれ?
#1165[2010/12/05 14:40]  ねみ  URL 

なるほど~♪

こんにちは~♪

ブログが無事に復旧できて本当によかったですね!

さて、今回のお話もとても楽しく読ませていただきました。『ニセ』を消滅させるメイナのかっこいいこと♪
そしてなるほど。あの『ニセ』はシエラの細胞が暴走したものだったのですね。意外な展開には眼を瞠るばかりですよ。

それにしても今回のセズクの語り口がとってもクールで萌えてしまいました♪
りんごと梨、美味しそうでした(笑)
#1157[2010/11/30 12:52]  三宅千鶴  URL 

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
#1156[2010/11/30 12:51]     

最終兵器作ってコントロールがきかなくなったらさすがに困りますからなあ……。

やですよなにもかも失ったシエラちゃんが「みんな殺してやる」とかいって終わるエンディングなんか。

そんなの書くのはわたしくらいか……(^^;)
#1155[2010/11/29 18:40]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]














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