Twilight of midnight

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ   3kaku_s_L.png   スポンサー広告
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村FC2 Blog Ranking
  ↑記事冒頭へ  
←ショック・・・    →場何
*Edit TB(-) | CO(-) 

怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第四四話

「君が永久君だね?
 娘が世話になっているようだな」

ごきげんのアリルに背中をぐいぐい押されながら仕方なしに食堂につくと
筋肉隆々の上品そうなおじさんが座っていた。


「お父様!?
 いつお帰りになられたんですか!?」

おじさんは飛びつくアリルを抱っこして頭をくりくりと撫で回している。
かなりすげぇおじさんだ。
そして行動の一つ一つに上品さが漂っている。

「たった今だよ、アリル。
 それより私は永久君と少し話がしたいんだ。
 ちょっと離れてくれないか?」

急に俺を指名したおじさん。
よく分からない不安が胸の奥から沸き起こりどす黒い泉となる。
泉からあふれ出た冷や汗が背中からじんわりと染み出し
張り詰めたような緊張が足を震わせる。

「会っていきなりこんなことを言うのはどうかと思うのだが……」

おじさんは腕を組んでさらに俺に接近してきた。
身長はセズクよりも高く威圧感がすごい。
アリルを抱っこするときはかがんでいたからなのか今みてみるとおじさんの身長は二メートルを超えてもおかしくないほど高かった。
俺は百七十二センチだからアバウト三十センチも真上から見下ろされていることになる。

「うちの娘はとても高貴な身分なんだ。
 元タルワナルカ家……ベルカ守護四族の一つだ。
 南北アメリカを任されていた種族で……」

ベルカと口に出せるだけで間違いなく連合郡の組織の一員なのだろう。
そうでなければたちまち警察が飛んでくる。
でもその気配がないってことはかなり高い身分だ。

「あなた、それ以上言うと波音ちゃんの命が……」

「私が後でもみ消しておく。
 だからそこは安心しろ」

タルワナルカ家……どこかで……。
記憶の糸を一生懸命にまさぐる。
おじさんとマダムがお互い穏やかにしゃべっているのを眺めながら
『ベルカ守護四族』と『タルワナルカ家』というキーワードで検索をかける。
どこかで聞いたことがあるんだ。
どこかで……

「連合郡に波音ちゃんが殺されてしまうんじゃないの?」

「いいか、私は元ベルカ守護四族のタルワナルカ家の領主だぞ?
 連合郡は私が持っているベルカの超光化学の記憶媒体を欲しがっているんだ。
 そして中将という地位も手に入れている。
 ここで仮にも娘の彼氏を殺してみろ。
 連合郡は間違いなく世界中から非難を浴びることになるぞ。
 それが嫌な連合郡は見逃すに決まってる、間違いない。
 そして良い知らせなんだ。
 発見されていた記憶媒体を研究していた研究所が何者かによってつぶされたらしい。
 シエラとかどうのこうの言われていたが間違いなく龍空家かシレルス家の仕業だろう。
 どっちにせよこれで私が持っている記憶媒体の価値がさらに上がったんだ。
 つまり我々――連合郡が帝国郡をつぶし世界を統治したとき私たちは貴族という身分になれる!!
 喜んでくれ、そしてもう一つ……」

俺の前でそんな大事な事漏らしまくってもいいのだろうか?
『龍空家』……『シレルス家』……。
それらを聞いたときすべてを悟った。
――そうか、この人たちはハイライトでジョンが俺に話してくれた裏切り者だったのだ。
一番ジョンが憎んでいるという一族。
それがアリルの家計――タルワナルカ家。

「あなた、波音ちゃんがいる前でそんなに沢山話したら……」

「大丈夫だ何を言っているのか一パーセントも理解できないだろうから。
 っとそれよりも……
 永久君すまないね、少し待たせてしまった」

「あっ、はっ、なんでしょうか?」

考え事で反応が少し遅れてしまった。
どうやらマダムとおじさんの話は終わったようでおじさんは俺の方に向き直っていた。
アリルがタルワナルカ家だったとしても別に俺には関係ないので正直どうでもいいことだ。
ジョンとかに報告ぐらいは入れておくか。

「すまないな、続きを話そう。
 要点だけかいつまんで話すと
 あまり私の娘になれなれしく近づかないで欲しいのだよ」

「お父様!」

「あなた!」

アリルとマダムの非難の声を片手で遮ったアリル父は俺の目をぴったりと見据えた。
体中から汗が噴出す。
俺が一体何をしたっていうんだよ、おい。
あの太い腕で殴られたら顎の骨折れるんじゃなかろうか。

「………………」

俺は覚悟を決めて逸らしていた眼をアリル父に注いだ。
アリル父の目に俺が日ごろから嫌っている自分の中性的な顔が映る。
男か女かどっちかはっきりしろよ顔の馬鹿。

「ふむ、良い目をしている。
 とにかく私にとって娘はとても大事な物なんだ。
 分かるね?」

「は、はい。
 分かります……」

アリル父の目から俺の目を離さない。
離した瞬間に横から殴られそうで怖い。
しばらく無言のにらみ合いが続く。
緊張して汗が冷えて寒い。

「ところで……」

アリル父は目を離さずに俺に話しかけてきた。
上からの威圧感はあいからわずすごい。
俺は威圧感のせいか一、二歩ほど後ずさりして少し逃げてしまった。
腕の服をまくって腕を上に開けるアリル父。
程よく焼けていてがっちりっていいな。

「この筋肉をどう思う?」

「……へっ?」

アリル父は唐突にそういうと身構えている俺にさらに筋肉を見せ付けてきた。
電灯の明かりを受けてテラテラと光を放つ筋肉。
二回繰り返すが隆々と盛り上がっている筋肉。
ぱっと見てとても力強く安心感を与える筋肉。

「えっと……。
 とても安心感を感じることが出来る筋肉だなぁって思いました……。
 力強さよりも安心感を与えることが出来て平和な筋肉だなぁって……」

アリル父の動きが止まった。
目を大きく開け顔がこわばっている。
しゃくにさわることでも言ったか……?
アリル父からの鉄拳が飛んでくるのを待つ。
五秒が一分に感じられるほど長い時間がたったように感じ
なんと俺もびっくりしたんだが、次の瞬間俺はアリル父に抱きしめられていた。
自分でもビックリするほど体がしなる!
いてぇ!背骨、背骨、背骨!!

「よく分かってくれたッ!!
 私は今とても嬉しいぞ永久君!!!」

あ、あざっす。
とりあえず俺の背骨が折れる、離して下さい。

「気に入った、気に入ったぞ!!
 今から永久君は私の息子だっ!!」

へ?息子?
ってかそれよりますます力はいってます、アリル父!!
肋骨、肋骨、肋骨!!

「あのーあなた?
 いい加減に離してあげたほうが……」

「お、おう、そうだな!
 これからよろしくな、我が息子!」

「もぅ……あなたったら……。
 私が女の子しか産まなかったことをココで穿り返すのね……?」

「波音君!大丈夫ですかっ!?」

む、無理……。
体中が痛いんだ、パトラッシュ。

「さって、飯にしようか!
 私はまだまだ筋肉をつけなければならん!!」

いやもうそれで十分かと思われます。
アリル父が手をパンパンと叩くと次々とメイドが料理を運んできた。
さまざまなおいしそうな食べ物が机上に並ぶ。
だが一角だけが異様な雰囲気を放っていた。
そう、アリル父の食事である。
アリル父の食べ物はざっと見て、卵の白身、肉……など。
飲み物はプロテインオンリー。
もうちょっとバランス考えろ、アリル父。

「あ、そこの君。
 我が息子にも私と同じメニューを出してあげてくれ」

メイドは俺を見て「息子……?」と疑問に思ったようだ。
そりゃそうですよね。

「かしこまりました」

ちょっと待て。
卵の白身ばっかり食えと、この俺に?
で、でも俺の分は流石にあの三十センチはあろうかと思うアリル父の山盛りの白身よりは
少しぐらいは減らしてくれるんだよ……な……?

「おまたせしました」

ギャー!!
あのおっさんとおんなじ量食えるかー!!

「さぁ遠慮しないで食べてくれたまえ、我が息子よ!
 いただきますだ!!」

ちょっと待って塩!せめて塩!!
それが駄目ならせめてマヨネーズだけでもいいから!!

「お飲み物をお持ちしました」

「あっ、すいませ……」

プーローテーイーンー。

「あ、あの出来れば水を……」

「プロテインオンリーコースでございます」

オンリーとかきつすぎるだろ。
それよりこのまま行くと物凄くたんぱく質だけを摂取してしまう計算になるんですが。
成人男性の必要たんぱく質摂取量の約二十倍(当社比)ぐらいあるんじゃないか?

「さて、みんなで一緒に……」

「「「「いただきます」」」」

えっとどうやってくれば良いんだ、コレ。
食べ方が分からず狼狽するしかない俺を見たアリル父は

「食べないのか、我が息子?」

そうたずねてきた。
いえ食べますけれど……。
アリル父は箸で白身を次々と串刺しにして口に放り込む。
ちゃんとした箸の使い方してください。
白身を口いっぱい頬張ると次は肉を放り込んでいた。
まるで白身が主食みたいだ。
と、とりあえず俺も食うとしようか……。

「い、いただきます!」

「おう!!」

うぉぉー!
口いっぱいに白身を、肉を詰め込む。

「やっぱり男の子は良いもんだ。
 なよなよしい食い方をするより我が息子のようにこうガツガツとした動きがいい!」

「お父様、それは私に対する愚痴ですか?」

「そんなことはないぞ、娘よ。
 私はお前がいてくれたからこそ今こうして頑張れているのだからな」

白身食った、食ったぞ!
まだ沢山あるけど八分九厘ぐらいは食えたぞ!

「波音ちゃん、そういえばお母さんとかは?」

「ぶっ!」

今飲み込んだばかりの白身が胃から逆流しそうになった。
吐き気で涙目になりながら答える。

「えっと家族――ですか?
 ――家族は皆死んじゃいました……。
 交通事故です、交通事故」

マダムははっとした顔つきになり手で口を押さえた。

「ごめんね、そんなことになってるとは知らなくて……
 波音ちゃん、ごめんね?」

「いえ……いいんです。
 大丈夫です、別にもう悲しくなんてありませんし……」

親戚も誰一人としていないし。
昔から一人には慣れていた。

「姉ちゃんとか……母さんとか……父さんとか……。
 物心ついたときにはもういなかったので……。
 ですので、こうやってアリルの家でご飯を一緒に食べたりすると楽しいんです。
 本当にうれしいんです、温かいんです」

海音姉ちゃんか……何で死んじゃったんだろうな。

「私が波音を守るの!
 こんなにかわいい弟なんだもの!」

「姉ちゃん、苦しい、離してよ!!」

「嫌よ、私のたった一人の弟だもの」

「苦しい、お母さんー!お母さんーー!!」

フラッシュバックのように記憶がよみがえってきた。
こんな会話してた、してた。
俺を守ってくれる姉ちゃんの背中大きかったな。
三歳も差があったら当然かも知れないが俺はとにかく姉ちゃんのおもちゃだった。
記憶をさぐってみても俺は間違いなく姉ちゃんに遊ばれていた。
あの時の家にはこうした家族の温かみがあふれていたな、今と違って。
家にいるのは最終兵器二人とモドキ一人だからなぁ。
人のぬくもりがどうも欠けている気がしてならん。
一人よりもマシなことに変わりは無いんだけどな。

「よくあるセリフを言ってるなぁって思うかも知れません。
 でも本当に温かいんです。
 こんなユニークな家族と一緒にいられるなんて俺、幸せです」

「波音ちゃん……」

「波音君……」

白身の山を眺めながら話を続けた。
黄身が抜けた卵は家族という黄身を無くした白身だらけの俺のようにも見える。
塩というのは卵につくもので彼女など配偶者のことかもしれない。
そうしたらどうあがいても俺はこのアリル一家の塩にしかなれず黄身には絶対になれない。
そう――思った。

「波音君、大丈夫ですよ」

急に後ろから抱きしめられた。
椅子に座っている状態からアリルに抱きしめられた。
やばい、胸当たってるぜ、お姉さん、へへへ。

「うぅ、いい話だなぁ……」

「あなた泣きすぎよ?」

「うぉぉう、おぉえぇんん、分かってる、分かってる、ないてねぇよぉぉん!」

いつまで抱きついているんだ、アリル。
いい加減に離れてくれないと俺の精神的な面でやばいじゃねぇか。

「波音君はもう私たちの家族です。
 だからこれからずっと一緒にいましょう?」

「……ありがとうな」

「波音ちゃん、あなたはもう家族同然。
 よかったら養子に来ない?ってぐらい家族同然よ?」

「うぉぉん、ばおおぉん」

ちょっとほろって来た。
アリル父何が言いたいのか分からない。
俺は卵の黄身、もしくは白身として受け入れられたのだ。
嬉しくて嬉しくて言葉にすることができなかった。
ようやく搾り出した一つの言葉。

「ありがとう」

その言葉の後しばらく沈黙が続きその沈黙はアリル父がティッシュで鼻をかむ音で幕を閉じた。
沈黙を破るアリル父の声が

「さぁ、しみったれたお話は終わりだ!
 息子よ、もっと食べろ!!
 そして筋肉をもっともっとつけるんだ!!
 将来的に我が娘をその豪腕で守るためにもだ!!」

そうやって空気をぶち壊し楽しい食事会が戻ってきた。
娘を守ること前提で話を進められていることに少しビックリした。
遠まわしに結婚OKと言われているのだろうか。
塩無しで白身をただただ口に詰め込む。
たっぷり二十分ほどかけて全部食った。
感謝の気持ちを込めて、そしてありがとうという気持ちも込めて。
そんな俺をみたアリル父。
何を思ったのか指をパチッと鳴らし「追加ー!」と一言。
ちょっと待ってマジでまた追加するの、入れないでおい、ちょっと!

「たっぷり食べて筋肉つけろよー?」

ニコニコと俺が食べるのを見て満足そうなアリル父。
苦しいおなかに白身の追加入ります。
結局俺は肉を一皿、白身を塩無し、マヨ無し、プロテイン二杯飲んで夕食を終えた。
もう一生分の白身を食べた気がする。
しばらく卵(特に白身)は見たくない、うっぷ。
そして食後の後はアリルの部屋で再び勉強。
ふらふらになりながらアリルの家の車に乗せられ自分の家に着いたのは
月が夜を照らす午後十時ちょい前。
送ってくれた運転手に丁寧にお礼を言って家の中に入る。

「お帰りマイハニー!
 寂しかったんだよー?」

ウゼェから絡んでくるな。
『I am cooking now and very very love you.』
と書かれたエプロンをつけたセズクが俺を抱きしめようとするのを右手でガードして左手でビンタする。

「愛のビンタは痛くないんだよ!
 でも波音のは痛い!!
 ってことは……」

「はいはい、悪いけど俺はお前に対する愛は無いから」

まったく。
絡んでくるセズクの相手を適当にしながら自分の部屋に入る。
セズクのケツを叩いて部屋から出した後鞄を部屋の隅に置く。
そのとき急激な疲れに襲われビタンと床に倒れこんだ。
多分この疲労の原因は約二十倍(当社比)のたんぱく質を食べたからだろう。
あ、後白身の山。
それ以外に考えられる理由が見つからない。
――でも少し卵が好きになった。





               This story continues.
関連記事
もくじ   3kaku_s_L.png   怪盗な季節☆ (長編)
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村FC2 Blog Ranking
  ↑記事冒頭へ  
←ショック・・・    →場何
*Edit TB(0) | CO(3)

~ Comment ~


別れたほうがいいんじゃないのかなぁ・・・
とも思いましたがアリル父すてき!!
佐槻も白身大好きだよ!!(そこか

でも、一度は今後についてじっくり考えてみるのも悪くないかもね波音くんσ('ω';)
#953[2010/09/05 12:12]  佐槻勇斗  URL 

アリルパパって・・・(笑)

こんにちは♪

アリルパパが登場してきて、アリルとの関係が想像以上に波音くんに影響を与えそうなのがわかってきましたねぇ。

波音くんは愛の力で二人の仲を裂きかねない障害を乗り越えていけるのでしょうか?
それにもっと大きな障害(セズク)が残ってますし・・・(笑)

アリルパパいわく「筋肉少年」になるのがセズクから逃れる一番の手かもしれませんね(笑)

続きを楽しみにしておりますので、がんばって執筆されてくださいませ♪
#943[2010/09/01 10:49]  三宅千鶴  URL 

「波音、波音、どうしてあなたは波音なの?」

ロミオとジュリエットの一場面が頭に浮かんできましたわい。

波音くん異様にヤバい立場なんですが……下手したら全世界を敵に回して逃避行の運命でしょうか?

どうなるかどきどきします。

がんばれ波音!
#939[2010/08/30 18:41]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←ショック・・・    →場何

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。