Twilight of midnight

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怪盗な季節☆ (長編)

怪盗な季節☆ 第三七話

「とりあえず、お昼にはまだ早いだろ。
 しばらくのんびりと森林浴でもしようぜ」

俺は携帯の背面ディスプレイで時間を確認しながら言った。


「森林浴……ですか。
 なるほど、いいですね!」

アリルも俺の意見にばっちりと賛成してくれ、森…とはいっても小さな小山だがそこに入ることにした。
とどめの絶景スポットは夕方になるまで待つしかない。

「きゃっ!?
 蜘蛛いるじゃないですかぁ!」

森に入ったとたんにアリルは小さな蜘蛛にビビる。
俺も蜘蛛が嫌いだがこれだけ小さな蜘蛛は可愛い部類に入るんじゃなかろうか。
アップで見ると気持ち悪いだろうけど。
ついでに思うんだが図鑑などに載っているもので蜘蛛などの顔面をアップで写している奴があるが
あれは気持ち悪いを通り越しているからやめたほうがいいと思う。

「えーと…まぁ森だから蜘蛛ぐらいいるさ!」

こう蜘蛛、蜘蛛連発していると気分が悪くなってくる。
ところでよく腹に赤い斑点を持っている蜘蛛をよく見ないか?
あれめちゃくちゃ気持ち悪いよな!
蜘蛛は益虫とか言うけどなんであんなにきもいんだろうな!!
こんなことを心の隅に思いつつ俺はどうすればいいのか考えている。
ビビっているアリルも可愛いが……手でもつなぐか。
腰でも抜けたのかいっこうに立つ気配もないからな。

「た、立てないならさ 俺の手でも掴めよ?」

日本語としてどうよ、これ。

「えっ……あ、は、はい!」

一瞬ほわんと放心状態になったかと思うとすぐに嬉しそうに顔を赤くして俺の手を取るアリル。
冷たくて小さく、か弱い手は少しでも力らを入れればすぐに折れてしまいそうだ。

「波音君、顔赤いですよ?」

「ばっ、馬鹿言え。
 俺は動揺しないことで有名だ」

そんなことを言っておきながらも体温はぐんぐん上昇中というのは自分で分かっていることだ。
動揺しないことで有名ってなんだよ、おい。

「空気がおいしいですね……」

「空気なんてどこも同じ味だろ。
 無色透明、無味無色」

「無色って二回いいましたよ?」

「うっ」

「それにおいしいというのは例えですっ。
 比喩ですっ」

ぷぅと怒ったようになる。
いやそんなこといわれてもなぁ。

「結構木が多いから空気が澄んでいるのかもな。
 でも俺は都会の空気の方が好きかもしれん」

「そんなことないですよ。
 波音君はこっちのほうがお似合いですよ?」

どういう意味だ、それは。
野生に返ろうみたいな意味だったらちょっと立ち直れない。

「それは俺が…あれか。
 野性的ってことか?」

「はい♪」

がーん。

「そうなのか―。
 俺ってはたから見たらそんな顔してたのか……ぐすん」

「中性的なのにどこかしら野生的に見えますよ?」

それにしても迷うことなく返事しやがって。
ちょっとぐらいためらってくれても罰は当たらんだろうに。

「あ、これ可愛いです……」

「?
 なにか見つけたのか?」

不思議に思ってアリルの目線の先を追う。

「本当だ、可愛いじゃないか」

なるほどうっすら黄色の花が咲いていた。
周りは高い草ばっかりだというのによく見つけられたものだ。
と、妙な所に感心する。

「なんて花なんだ?
 あいにく俺は図鑑とか一切持ってきてないぞ?」

「私もよく分かりませんが……可愛い……」

じーっと見つめ続ける。
俺は一人ポツンと放置されている。
これが放置プレイとか言う奴か、結構心にくるじゃねぇか。
それから十五分ほどしてようやく満足したのか

「待たせちゃってすいません。
 私、花が大好きなので……」

「いやかまわないさ。
 むしろ女子らしくいい趣味だと思ってるさ」

「あ、ありがとうございます!」

きっとアレなんだ。
アリルは天然なのだろう。
そう考えたいしそう思いたい。
これ以上俺の周りに変な奴はいらない。
三時間ほど歩き回っただろうか。
小さな発見を繰り返しこれまでにない森林浴を楽しみ、ふと時間を見るともう二時になっていた。
もともと小さな山なのでぐるっと一周して元の公園へと戻ってきていた。

「疲れましたね。
 あっついです」

アリルはうっすらと汗をかいていて麦わらを取った。
長い金髪の髪が頬に張り付いている。
ポニーテールじゃなくても結構いけるではないか。
汗にぬれた髪をかきあげると風が髪を金の波へと変え青空とよく映える。

「特に俺が一番疲れたわ!
 何でがけを登ってまで花をとってこにゃならんのだ、ちくしょー!」

俺はせっかくの戦艦Tシャツにべったりと泥がつき指先の皮はべろんべろんに向けていて
膝はうっすら血がにじみポーチの中は花だらけという状況である。
消毒液なんていい年こいて持ってるわけないし、本当に踏んだり蹴ったりな格好である。

「ありがとうございますっ♪
 おかげで欲しい花が全部採れましたっ」

俺の携帯とかポーチに入っていたものは全滅いたしました。
携帯しか入ってなかったけどな。
あーあ、土まみれ。
とめるまもなくポーチの中に土入れやがって………。
携帯は何とか生きていた。
全滅だけはなんとか逃れていてくれたようだ。

「別にいいさ、痛いけど。
 気にしてなんかいないぞ、痛いけど。
 花が採れたんだから文句はないだろ、痛いけど」

「大丈夫ですか?
 ありがとうございます、本当に。
 それはおいておいて……」

おいとくなよ!
ちゃんと俺の苦労した部分は拾っておいてくれよ!
ぐっと我慢する。
コレは天然なんだ。
そうなんだ。

「お弁当にしませんか?」

ごそごそとバスケットの中からサンドイッチを取り出した。

「いただきます」

マッハで返答してアリルに笑いかけおずおずと出されたサンドイッチを受け取る。
さっきの嫌味はどこへやら。
自信が無いのかどうかは分からないが別におずおずと出さなくてもいいのにと思ってしまう。
結構見た目も綺麗なんだけどな。
味はどうかは分からないけど。
ラップを剥ぎ取りかぶりつく。

「……………」

あえて無言。
そわそわしだすアリル。

「あ、あの、味は……」

しばらくの沈黙後アリルが静寂に耐えれなくなったのか俺に話しかける。

「おいしい」

どうだ、放置プレイの味は。
なかなかのもんだろう、はっはっは。

「おいしいぞ、なかなか。
 さすが育ちがいいなぁ、お主は」

「本当ですか!?
 よかった………」

ほっと胸をなでおろすアリル。
安心の笑みを顔に浮かべ自らもサンドイッチをちょびちょびかじりだす。
それと反して俺はがっつりサンドイッチを口に次々と放り込んでいる。
思った以上に沢山入っているのだから驚きだ。

「はい、お水です」

「ん…あんきゅー」

口いっぱい頬張っているせいか「サンキュー」が「あんきゅー」になってしまう。
おいしいものはおいしいから仕方ない。
すきっ腹には何でもうまいとは言うがコレはすきっ腹じゃなくてもおいしい。
あっという間に沢山あったサンドイッチはなくなってしまった。
また差し出された水を一気飲みして一息つく。

「ぷはーっ!
 うまかったぁ……」

「波音君早い……私まだ一枚目の途中なのに……」

「男だからな」

「くすっ……
 そうなんですか」

あ、笑った。

「――ようやく笑顔になったな」

「そ、そうですか?」

アリルはサンドイッチを食べる手を止めて困惑の表情を浮かべる。
俺も俺で何を言っているんだと後悔している、反省はしていない。
朝からいろんなハプニングがあったとはいえ綺麗な笑顔にはなってくれなかったからな。

「いまから臭いセリフ言うからな。
 聞きたくなかったら耳、ふさいでおいてくれよな。
 正直俺は笑っている顔が一番好きだぜ。
 えーと、そのだな…可愛いからずっと笑顔でいてくれよ。
 そうするとなんていうか……気が楽になるんだ。
 もういいぞ、臭いセリフ終わったぞ」

アリルが手で耳をふさいでいたかというとまったくふさいでいなかった。
臭いセリフを真正面から凛と受け止めてくれた。
俺は何を言っているんだろうと思いつつ心に思ったことを考えもせずに口から出したのは
本当に久しぶりのことだった。
なぜかアリルの前では素直になれる俺がいた。

「かわいい……ですか。
 わかりました。
 私、実はずっと緊張しててですね…えへへ……」

蝉の声が急に大きく聞こえ始めた。
ワンと一気に響いてくる声。
例えるならピンと張られた絃がきれたような感覚。
そして俺は笑っていた。
大声を上げてじゃなくにっこりと。
それにつられたのかアリルも笑ってくれた。
俺にむかってにっこりと。
そしてすぐに時間は過ぎて行き太陽がようやく落ちてきてくれた午後五時頃。
太陽光が白から赤へと換わり行く隙間の時間。
その時間を狙って俺の絶景スポットへとアリルを連れて行った。
少し切り立ったようになっている山肌の上に座りほら、と指差した。
隣でハッと息を呑むアリル。
俺もはじめてみたときは息を呑むほど綺麗だと思ったのを覚えている。
紅い夕日が無機質な街を紅く染めている。
ビルなどは紅い光を反射して鈍く光り、紅い海の中に白い島を作っていた。
車のヘッドライトが光りの線のようにうねり鉄橋などがまがまがしく光に身を任せている。
暗いところはもうすっかり夜になっていて昼と夜の狭間に迷い込んだ俺達。
夜の部分では白い四角の光りがくっきりと浮かび上がり
昼の部分では紅い光が街をすっぽりと覆っていた。

「きれい……」

「俺のお勧めスポットだからな。
 姉ちゃんと一緒に見つけた思い出の場所でもあるんだ。
 今だから言うけどな……」

俺は街から目をそらし、アリルの目を見た。
紅く光っている俺が映っている。

「正直ここに来るのは嫌だったんだ」

アリルは「えっ?」と表情を変えた。
申し訳なさそうな表情へと。
あわててその理由を伝える。

「姉ちゃんと思い出とか……家族のことを思い出すから。
 俺の家族――みんな死んでしまったからさ……」

「波音君……」

「俺には親戚も誰一人としていないんだ。
 おばあちゃんとかの記憶すら一切ない。
 でも今の俺はコレでいいんだ。
 鬼灯のおっさんに拾われてからずっとこれでいいんだ…って
 そう思ってきた。 
 だけどそれは間違っていた。
 今ようやく俺はコレでいいんだって環境にいるんだ。
 だって………
 この話を話せる彼女が出来たから。
 ごめんな、こんな暗い話して。
 仁にもまだこの話はしていないんだ。
 おっさんにもな。
 だから実質アリルが一番初めに聞いた人なんだ」

「……………」

「俺の隣にはアリルという彼女も出来たことだし。
 これからもよろしくな」

「………波音君……」

「ちょっと臭いセリフ連発してるな。
 ごめんよ」

笑いながら目を細めて太陽を見つめる。
光りが弱まった太陽はもう半分以上体を山に隠し夜が勢力を拡大し始めていた。
携帯の時報が鳴り六時という時間を教えてくれる。
夏にしては早く沈むんだな、今日は。

「波音君……」

目をつぶるアリル。
えーっと、これはどういう状況なんだ?
誰か解読班をよこしてくれないか。
なるほど解読班さすがだな、理解した。
キスしろと、ようするに。
あぁ、ドキドキしてきた。
背中に変な汗かいてるよ。
太陽まぶしい、さっきと全然ちがうじゃねぇか。
俺も男だ覚悟を決めた。
ゆっくりアリルに顔を近づけていく。
白いきめの細かい肌を前方に目視で確認。
コレはもうするしかない空気です、大佐。
突撃します!
うぉおおぉぉおお!!!

………。
…………。
……………。



そして………



キスよりも早く邪魔が入った。
ガサッと草むらからおっさんが転がり出てきやがった。

「うわっ!しまった!!」

鬼灯のおっさんあんた何やってんですか。

「ちょっ、親父!」

詩乃……空気読めよ、そこ。

「いやーすまないなぁ波音。
 私も学生時代に戻りたくてなぁ」

おっさん自重しろ。

「まったく、ばれちまったじゃねぇかよ」

仁も出てきた。
この三人は本当に…もうね。

「てへへ……ばれちゃったね」

「あぁ、どうやらそのようだ」

綾に遼お前らもか。
特に、綾お前は信じていたんだがなぁ。

「あー腰が痛い」

「波音、今日はいい天気だな!」

冬蝉と彗人兄さんお前らなぁ――。
確かにいい天気だけどもっと他に言うことがあるだろうに。
俺とアリルは一歩手前の状態で硬直している。
おっさんに指摘されてあわてて離れ同時に顔を赤くしてしまった。
くそっ、あと少しでファーストだったってのに……。
空気読めよ、まじでこの迷惑集団どもめ。

「はぁ……」

心の中で毒づきながら俺は大きなため息をついた。





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~ Comment ~


次回は草むらと電柱と壁の影を確認するなり。波音くん。
#756[2010/06/05 13:01]  ヘソ子  URL  [Edit]

ちょっと前から妙にデジャヴ…と、思っていたら、波音ちゃんがつかう「お主」という呼称にデジャヴしてるらしいと気付きました。幼馴染もよく言ってたなあ、と。
というのは置いておいてセズクは―――――ってすみません自重します[壁])≡サッ!! 今さら遅すぎる気がしなくもないですが自重します[壁])≡サッ!![壁])≡サッ!!
……アリルちゃんがヒロインという展開にがんばって慣れようと思うものの、なかなか慣れませんorzメェメェ
波音ちゃんがヒロインで、シエラとセズクがヒーローがいい…vvv←おい;
まあ、なんにせよ青春ですね! いいなあこういう青春してみたかった!(笑)
#755[2010/06/04 23:37]  卯月 朔  URL  [Edit]

甘い。
甘すぎてどうしよう……っ//
読んでいてこちらのほうが顔が赤くなっちゃうようなセリフをすらすら言っちゃう波音くん。なんというか……
さすがですb

キスはまた今度だ!!笑w(∀)w
#749[2010/06/01 21:00]  佐槻勇斗  URL 

シエラとメイナがなにをしているだろうか考えただけで背筋に寒気が走ります……。

にげてーアリルちゃんにげてー!(笑)
#746[2010/05/30 12:15]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

初デート♪

こんにちは~♪

さっそく読ませていただきにやってまいりました~♪

波音くんとアリルの初デート、なかなか良い感じに進んでしますね。緊張する二人の初々しさが可愛らしく、読んでいてとても好感が持てました。

とくに二人で夕焼けを見るシーンは感動的でさえありましたね。
『ビルなどは紅い光を反射して鈍く光り、紅い海の中に白い島を作っていた。』
↑この表現など情景が眼に浮かぶようで、本当に素晴らしかったです!そして波音くんの過去の語りも胸にグッときましたよ~!

それなのに・・・ああ、いいところで寸止めにしてしまう手腕はさすがです(笑)
こんだけのギャラリーがいたら何もかも台無し・・・波音くん、あわれなり・・・(笑)

では次回の続きを楽しみにしておりますね~♪
#745[2010/05/30 10:32]  三宅千鶴  URL 














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