Twilight of midnight

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未知との友情 (矢端兄さんへ) 

ささげもの

初めに謝っておきます。
西部の知識が全然無いため
独断と偏見で西部の雰囲気は書かせていただきました。
ま、まぁエリーちゃんもローラースケート履いてたりするし
べ、別にいいですよね!?
細かいところはおかしいですが、まぁ大目に見てください。
では、どうぞ。





「う……うん……」

ひんやりと冷たい艦橋内。
レリエルシステムに直結された椅子の上で蒼は意識を取り戻した。

「いったい何が……」

シートベルトがしっかりと体に巻きついていることを確認して
蒼はネメシエルの艦長ナクナニアニューロ光AIに話しかける。

「状況は?」

しばらくの沈黙が場を支配する。

『不明。
 現在我々は状況を失っている』

「不明って……。
 と、とにかく状況を至急把握!
 本部に連絡を取ってください!!」

『了解』

蒼はちくりと嫌な予感が胸を刺すのを感じながらため息をついた。
これからのことも考えなければならない。

『蒼副長、本部との連絡は取れない。
 しかし地軸、重力波などから計算した結果
 ここはアメリカ大陸西部らしき場所だ。
 それと艦体に僅かながらプラズマを感知。
 おそらく次元を移動してしまったものと考えられる』

蒼の頭にぱっと広がる過去の記憶。
艦隊の旗艦として太平洋上空一万メートルを巡航速度で航行中のことだ。

(そういえばそうでした……。
 前方にスーパーセルを感知したものの避け切れなくてそのままつっこんだんでした。
 その直後計器類に異常ノイズが……。
 雷に撃たれたような衝撃が艦全体に走って……)

蒼は目を開け、ネメシエルに命じ艦橋内の窓の装甲シャッターを開けさせる。
痛みが走るほどの強烈な光。
目が馴れた蒼に突きつけられた現実。

「そ、そんな……」

窓から広がる風景は目を疑うようなものだった。
巻き上がる砂。
所々忘れられたように突っ立っている木々。
青く広がる雲ひとつない空。
あの小粒たちは牛だろうか?

(さっき艦長が言ったアメリカ大陸西部というのは本当のことだっんですね……。
 とうとういかれたやがったとか思ったんですが……。
 まさか……)

とにかく何としてでも元の次元に帰る方法を見つけなければならない。
こんな田舎ではネメシエルが傷ついたとしても修理など期待できないからだ。
もしシステムに異常があったりしたら……。 

「システムに異常は?」

不安げに聞いてみる。

『なし。
 システムオールグリーン』

安堵のため息がでた。
システムオールグリーンなら何とかなるというものだ。
まぁ雷ぐらいに撃たれて壊れるようでは旗艦としてやっていけないし
何より超兵器という名が廃るというものだ。

「とにかく機関始動。
 武装はいつでも使えるようにしておいてください」

『了解。
 補助機関始動。
 ネメシエル姿勢保持』

運よく、湖らしき場所に着水していたのは不幸中の幸いだったようだ。
それもかなり広い湖に。
とにかく機関を始動して上空で退避。
それから……。

『副長、右舷から小型艇接近!』

ネメシエルの声に頭を蹴飛ばされ、蒼は艦橋の窓から右舷を見下ろした。
木製の小さな船だ。
その上に三人の人が乗っている。
女性も一人混ざっているようだ。

「合戦準備。
 小型艇にロックお願いします。
 相手が攻撃してくるのでしたら構わず撃沈。
 我が艦の安定を第一に」

冷静な声で命令する。
戦闘には慣れっこだ。

『了解。
 レーザー高角砲にエネルギー装填開始。
 目標ロック完了』


     ・
   (一時間ほど前)
     ・

「ねぇーー。
 ひーーーまぁーーーー」

金髪セクシーきょぬーな女の子が小さな酒屋でグラスを転がしていた。
彼女の名前はエリー。
エリー・ウィンスレット。
愛用のリボルバー銃の掃除も終わりやることが本格的にないらしい。
最近物騒な輩も出てこないし。
西部には似合わないほど平和と言えた。

「あぁああ………。
 平和も考え物よねぇ……」

グラスがエリーの吐息で曇る。

「まぁまぁ、エリー。
 平和ほどすばらしいものもないんじゃないかな?
 戦争よりかは私はこちらの方が好きだよ」

年老いた酒屋の主人がグラスを拭きながら笑う。

「それもそうなんだけどねぇ……」

バーン!!

「エリー大変だ!
 事件だ!!」

扉を蹴破らんばかりに空けて入ってきた丸顔の少年。
みんなからは眠そうな顔をしたジョン。
スリーピィ・ジョンと呼ばれている。

「事件!?」

ぱぁっと顔を輝かせエリーは立ち上がった。
さっきまでの曇りはどこへ行ったのやら。

「すぐに案内しなさい、ジョン!」

「馬を待たせてあるんだ!
 詳しくは馬に乗りながら話すよ!」

ジョンに続いて馬に乗ろうとしたエリーだったが
足を唐突に止めた。

「マスター、行ってくるね!」

くるりと振り返り酒の代金を指で弾いた。
ジョンにせかされながらエリーは馬に飛び乗る。

「はいやーっ!」

鞭を馬に叩きつけエリーはジョンと一緒に走り出した。

「緊急事態なんだ!」

「さっきそれは聞いたわ!
 早く話しなさいよ!!」

ジョンは馬の手綱をしっかりと握りエリーに向いて
流れるように話し始めた。

「ついさっきのことなんだ。
 アリゾナには珍しく雨が降った」

馬が蹴る地面が水をたっぷり含んだ泥を散らす。
エリーはそれを見てうなづいた。
確かに雨が降ったらしい。

「雷まで鳴り出すほどのすごい雨でね。
 そりゃもう世界の終末といってもいいぐらいの……」

「前置きは良いから早く本題に入って」

エリーはぴしゃりとジョンの話を止めた。
長くなると頭に毒だ。

「二回も遮られた……。
 ざっくり言うと」

「うん」

「よくわからないものが来たんだ」

しばしの沈黙。
馬が地面を蹴る音だけが響く。

「ごめん、やっぱり前置きからお願い」

「はぁ……。
 まぁいいや。
 Seeing is believing.(百聞は一見にしかず)
 見てくれれば分かるよ。

馬に乗って約五分ほどのところにある湖についた。
この湖は街を潤してくれるものでもあり砂漠の中のオアシスとも言える存在である。 

「あれだ」

そこに鈍く陽光を跳ね返す物体が存在していた。
おそらく湖の上に浮いているのだろう。
ここからだと小さくしか見えないがエリーはその物体から
すさまじいほどの殺気を嗅ぎ付けていた。

(これはやばいかもしれないわ。
 街で慎重に準備をしたほうがいいかもしれない。
 応援も絶対にいる。
 機関銃も用意しておいて損はないかもしれない)

そう考えたエリーは

「ジョン、私は街で応援を要請してくるわ!
 ボートは湖にあったわよね?」

「た、確か……」

「ここであの物体の動きを監視しておいて。
 大体三十分ほどで戻ってくるから。
 それと
 絶対にあの物体に手を出しちゃ駄目だからね。
 死にたくないなら」

いつになく真剣なエリーに気圧されたのか

「わ、分かった……」

ジョンは頷くことしか出来なかった。
エリーはそれを見てもう一度念を押すと
砂風のように一目散に街に戻っていった。
エリーが完全に見えなくなるのを確認すると
ジョンは一人ぽつんと荒地の中サボテンの陰に隠れながら
物体に少しずつ近づいていった。

(エリーには手を出しちゃ駄目だって言われたけど……。
 少しぐらいならかまわないよな?)

好奇心にはいつの時代の男も逆らえないのだ。
くっきりと物体の細部が見える距離まで近づいていく。
じゃりっと砂音をたてる事すらためらわれるほど不気味な静けさだ。
いつもいるはずの鷲や水鳥の姿が一羽もない。

(まるでハリネズミみたいな建築物だな。
 機関銃みたいなものも付いてるし……。
 本当になんだろう、コレ。
 ぱっとみて船みたいな形してるけど……。
 煙突はないし……。
 それにこんな巨大な船なんて見たことも聞いたことも……。)

ジョンがしげしげと眺めていると
ゴゴンと小さな音がして物体から突き出した建物のような場所の
一部分が開いていくではないか。
その中を見てしまい、ジョンは絶句した。
自分達と同じブルーの瞳を持ち
長い腰まである茶髪を垂らした少女が軍服に身を纏い
薄暗い建物の中からこちらを見下ろしていたからだ。
気味悪い建物とその少女の差が余計に恐怖を掻きたてる。

(お、女の子!?
 そ、それにまだ子供じゃないか……。
 不気味だよぉ……エリー早く来てくれ……)

ささささと速やかにそこから離れエリーと分かれた場所に戻る。
馬の影に隠れる。
さっきの女の子に見つかってやしないか?
ジョンは不安だった。
馬は能天気に草を食み、ぶるひひと鳴くだけだ。

「ちくしょぉ……嫌なもん見ちまったよぉ……」

後悔先立たず。

      ・
      ・
      ・

それから十分ほどでエリーは戻ってきた。
一人の保安官を連れて――だ。
なかなか腕が立つ男らしい。

「ジョン、待たせたわね?
 何か動きがあった?」

馬から降り、エリーはジョンに尋ねた。
ジョンは、二人に詳しく見たままのことを話し始めた。

「とにかく俺様はボートに乗ってあれに近づいてみようと思う。
 念のため俺様の愛銃も持ってきておいた。
 これでたいていのヤツは吹っ飛ぶぜ」

中年の保安官男性――名前はダンケが
にやっと笑い自分の背中の包みを指差した。
呆れたことにこの男、愛銃がガトリング砲なのだ。

「とにかく近づいてみましょ。
 話はそれからね」

三人は馬を木につなぐとそろそろと船へと向かった。
そのままボートに乗りゆっくりと水上を移動する。
そのときだった。
鉄と鉄が擦れるような音がして建物横の砲台郡がこちらを一斉に向いたのは。
ゆらと立ち上る殺気。
こちらが攻撃したら間違いなく……。

「な、なんだってんだ、この化け物はよぉ!!」

そのとき悲鳴が発せられた。
ダンケだ。
彼もこの物体から立ち上る殺気を敏感に感じてしまったのだろう。
怯えている。

「お、落ち着きなさい!
 落ち着いて!!」

ダンケのガトリング砲の包みがいつのまにかほどけている。

「ちょっと、ダンケ何するつもり!?」

「あ……わわ……」

エリーがする前にダンケのガトリング砲の銃身は回転を始め
灼熱の銃弾を船へと放っていた。

「この……馬鹿っ!!」

エリーは思わず叫んでいた。

      ・
      ・
      ・

『目標発砲』

声が現実を蒼に伝えた。
銃弾がイージスにはじかれ空に消えていく。
目標は武力を行使したと言うことだ。
仕方がない。

「目標を撃沈します。
 撃ち方はじめてください」

十五センチ三連装レーザー高角砲にエネルギーが伝達された。
そして青の光の束が一気に小型艇へと襲い掛かる。
水柱が小型艇の周りに大量に発生しその姿を覆い隠した。
水柱はやがてきえ細かい水霧となり崩れる。
水霧が消え去ったとき小型艇はばらばらになり木片と一本のオールが浮いているのみとなった。

『目標撃破』

「ご苦労様でした。
 周囲を警戒しつつ機関始動お願いします。
 高度五千メートルにて停止」

『補助機関ナクナニア光反動炉始動。
 主翼のナクナニア超光放出線にパワー伝達。
 ネメシエル離水』

蒼はその声を聞くとふぅとため息をついた。
髪の毛を弄り飛び跳ねたところを手で押さえる。

「高度五千を維持してください。
 何か異常があったらすぐに報告お願いします」

きりきりとシステムに命令を下す。
適度に保たれた緊張を破るかのように
蒼のお腹がくぅと鳴いた。

(そういえばご飯も食べていませんでした……。
 後でネメシエルに作らせましょうか……。
 良い天気ですし敵機も来ない。
 外で食べることにしましょう)

「ネメシエル、ご飯お願いして良いですか?
 後、私外で食べたいので艦橋扉ロック解除お願いします」

『蒼副長最近の趣味は散歩か??
 やたら外に出たがるが』

「からかわないでください。
 そんな気分だから外に出るだけです。
 それに誰もがこんな陰気な場所に閉じ込められていたら
 ご飯の時ぐらい外に出たくなりますって。
 とにかくご飯お願いします」

『艦長に命令するなんてたいした副長だよまったく』

ネメシエルの呟きは聞かなかったことにして流す。
下手に反応すると面倒くさい。
自動扉から外に出る。
乾いた空気が頬を撫で甘い空気が肺に満たされた。

「うーん……」

ぽかぽかと暖かい太陽を感じながら艦橋内から
ネメシエル艦長特製サンドイッチを持ってきて高角砲郡の下に広がる景色を眺めながらかじる。
レタスとハムがパンによく合うものなのだ。

「~♪」

あの小さく寄り添った大量の四角いものは街だろうか。
雲ひとつなく、澄んだ空気のおかげでよく見える。
びっくりするほど平和だ。
先ほど小型艇を吹き飛ばしたことなどもう蒼の頭から消えていた。
そのことが油断を呼んだかもしれない。

「動かないで」

静かだが凛とした声とともに冷たく固いものが蒼の後頭部に押し付けられた。
皿に戻すことも出来ずに蒼は固まる。

(ネメシエルの警戒装置を掻い潜って……?)

      ・
      ・
      ・

「ダンケ!
 あんた何やって……」

「ゆ、指が勝手にうごいちまったんだよ……!!」

なんとも情けない顔のダンケに舌打ちするももう遅い。
船に大量に並んでいる砲台が一斉に砲撃を加えてきたからだ。

(ひ、光? 
 こんなもので攻撃とは……笑わせるわ。
 悪いけど身の安全のため。
 私たちが生き残るのはあんたに鉛弾をぶち込んで黙らせるしか……)

青い閃光がエリーの耳元をかすった。
そのまま水面に落ちる。

(ほらやっぱりたいした威力じゃない……)

だがその考えは無残に打ち砕かれた。
物凄い水柱が起立し、視界を遮ったからだ。

「なっ……!?」

「え、エリー!!」

ジョンの声が鼓膜を振るわせる。
一本の閃光が今まで乗っていた小型艇を貫く。

「飛び込んで!!!」

エリーとジョンは鍛え上げた反射神経で逃げ切ることが出来たが
ダンケはそうは行かなかった。
案外小心者だったダンケは腰を抜かしていたのだ。
小型艇は一瞬にして炎上、爆発。
無残な木片と化した。

「ジョン、ジョン生きてるわよね!?」

エリーは水面から顔だけ出してジョンの安否を確かめた。

「も、もちろんだ!
 こんなことで死んでられない!!」

二人はお互いの安全を喜びたかったが
ぼやぼやしていると追加攻撃を受ける可能性があった。

「いい、ジョン。
 聞いて。
 私はあの船に乗り込んで正体を探ってくるわ。
 あなたは街に戻ってこのことをみんなに話して。
 お願い」

「だ、だけど……」

「任せたわよ!!」

エリーはジョンにそう指示を出すと船にゆっくりと近づいた。
敵は全滅したと思い込んでいるのか一切攻撃をしてこない。
おかげで無事エリーは船体後部の突き出した場所に捕まることが出来た。

「この子を落とさなかったのは不幸中の幸いだったかもね」

エリーはホルスターからリボルバーを取り出すと構えながら船の甲板に上がった。
砲塔から砲塔へ隠れながら建物のようになっている場所にゆっくりと近づいていく。
床の幾何学模様が気にならないでもなかったが
今のエリーの心は一つ。
この船の正体を知りたい一本に縛られていた。

(この規模の船なら約一万人は乗っていてもおかしくないわ……。
 それなのにどうして誰もいないのかしら……。
 もしかしてゴーストシップ?)

昔エリーは保安官に連れられ船を見に行ったことがある。
外輪を蒸気で回し約二ノットという従来では考えられないスピードで
川をすべるように航行している姿に唖然とさせられたものだった。

(これが船だとしても外輪が見当たらないし
 煙突らしき存在もないじゃない……。
 それしてもやたら変に光る甲板だこと……)

エリーが走ろうと身をかがめたときだ。
低い唸り声のような音がさっき登ってきた後部らへんから発せられた。
ぐらっと揺れ思わず手を床に着いたエリーを載せたまま船の唸り声はだんだん高くなってゆく。
そばの砲塔に手を付きながら立ち上がったエリーは愕然とした。
眼下に芥子粒のように見えるのは紛れも無く自分が守ってきた街で
大きく見える木々がおもちゃのように小さい。

「どういうことなの…?」

思わず呟いてしまった。

(飛んでいる……?)

エリーはこんな巨大な船が飛んでいるという現実に精神を突き崩されそうになった。
怖がっている場合でないのはわかっているのだが……。
鉄のきしむ音がして建物の扉が開いた。
思わずリボルバーの銃口をそちらに向ける。
さっき自分達を攻撃してきた砲台郡を見下ろし慎重に
慎重にエリーは角を曲がった。
ちらと様子を伺う。
髪を風に遊ばせながら女性が立っていた。
薄い茶色に赤いラインが入った服…おそらく軍服に身を包んでいる。
手に持っているのはサンドイッチだろうか?
女性は伸びをすると空を仰いだ。

(まだ子供じゃない!)

少女は床の隅に座ると皿からサンドイッチを取りまふまふとかじりはじめた。

(子供に銃を突きつけるのは嫌だけど…仕方ないわよね…)

エリーは完璧に気配を消すとゆっくりと少女に近づいた。
そして右手に握ったリボルバーの銃口を少女の後頭部に押し付けのだ。
少女が固まった。





「な、何者ですか…?」

蒼はびくびくしながら尋ねた。
なるべく刺激しない方がいいにちがいない。

「答える義理はないわ。
 あなたこの船の乗組員かしら?」

凍てつくような冷たい声。
プロ、もしくは軍人に違いない。
嘘をついてもばれるだろう。
それに蒼は後ろからエリーの銃を突きつけられているのだ。
生まれてはじめて感じた死の恐怖に蒼はただ震えるしかなかった。

「は、はい。
 私はこの艦の副長……です」

となれば相手の言うがままになるしかない。
正直に答えた。

「なら話が早いわ。
 今すぐ湖に戻って。
 あなたをちょっと調べさせてもらうわ」

エリーは蒼の頭から銃口を外した。
蒼はサンドイッチをのせた皿を両手に持ち艦橋内に戻ろうとする。
ネメシエルに指示を出すためだ。

(艦内防衛レーザーで侵入者を排除するしかないですよね……。
 平和だと思ったんですが……うぅ……)

心の中で嘆く。
エリーは知るわけがない。
ぴりぴりと張り詰めた空気が二人の周りを包んでいた。
くぅ…。
そんな空気をつゆとも知らず蒼のお腹が鳴った。

「う……」

蒼の顔が真っ赤になる。
エリーも女だ。
この恥ずかしさは理解できる。

「お、お腹減ってるのあなた……」

「は、はい……」

緊張が一気に弛緩してしまった。
エリーは蒼を隅から隅まで眺め回す。

(軍人みたいだけど銃の類いは持ってないようね。
 それにこんな少女が格闘技を仕掛けてきても私に勝てるわけない。
 ならそんなに警戒しなくても大丈夫かもしれないわね)

そういった結論に達したエリーは蒼に

「続き食べていいわよ」

と言ってリボルバーをホルスターに戻した。
だがいざとなれば早撃ちできるようにはしておく。

「あ、ありがとうございます…」

蒼はエリーを横目で見ながらお礼を言った。

(やっぱり女の人でしたか……。
 それにしてもスタイルいいなぁ……。
 ちょっと羨ましいです……)

(だけど本当にこの少女が軍人なのかしら?
 まだ十四歳ぐらいだと思うけど……)

こら蒼お前何考えてんだ。
ごめんよ。
その部分がお粗末なのは俺の趣味なんだ。
許してくれ。

「食べないの?」

エリーに聞かれた蒼ははっとして段差に腰掛け
足をぶらぶらさせながらサンドイッチを頬張りはじめた。
その横にエリーも座り小さな街を眺める。

「ねぇ、ちょっと教えて欲しいんだけど……」

「うがむ……な、何ですか?」

蒼はサンドイッチを飲み込むとエリーに首をかしげた。

「あなた何者なの?」

ストレートなパンチだった。
言っても理解できるのだろうか。
それが蒼は心配だった。
今だ消えないはじめての死の恐怖はエリーを恐れの対象として
完全に認識してしまっている。

「わ、私はこの艦の副長で……。
 その……」

「私、さっきあなたが攻撃した小型艇に乗っていたの。
 青い閃光が飛んできたかと思ったら……爆発した。
 鉛弾じゃこんなことはありえないわ。
 挙句に空まで飛ぶし。
 この船には常識が通用しないようね。
 何を言っても驚かないわ」

エリーはにっと蒼に笑いかけた。
さっきまでの冷たい声の人と同一人物とはとても思えない。

「私はベルカ超空制圧第一艦隊旗艦超空要塞戦艦ネメシエルの副長です。
 この艦は……超光化学で作られたものでして……」

「えーと……。
 続きは街で聞いても良い?」

      ・
      ・
      ・

「で、つれて帰ってきたと」

「そそ」

「こんな子供がねぇ……」

「信じられないでしょ?
 でもれっきとした副長さんらしいわ」

酒場の真ん中でエリーは蒼を隣に自慢げに語っている。
その周りを街のほとんどの人が取り囲んでいた。
蒼は恥ずかしいのかずっとうつむいている。

「お嬢ちゃん、名前は?」

いかつい顔をした筋肉ムキムキの炭鉱掘りのお兄さんが尋ねた。

「えっと……蒼です。
 空月・N・蒼」

「空月・N・蒼……ね。
 すごい名前だな。
 ここいらじゃ見ないね。
 空月が名前かい?」

「い、いえ蒼で……す。 
 蒼の方が……その……名前です」

「よかったらこの後……」

エリーがその二人の間に割って入る。

「ほらお兄さん、副長さんがびびってるじゃない。
 顔が近いからよ。
 それにあまりからかわないほうがいいわ。
 この子ダンケを殺した張本人なんだから」

エリーはふふんと笑った。

「おい、聴いたか?
 あのダンケをやっちまったんだとよ」

「ダンケのヤツはえらそうな態度でみんなから嫌われてたからな。
 むしろありがたいっちゃありがたいこった」

「ちげぇねぇ!!
 わははははは!!」

炭鉱掘りのお兄さんが席に戻る。

「じゃあ俺が……」

「おいおい爺さんやめとけって!」

「誰が爺さんじゃ!!」

和やかな雰囲気だ。
だがそれはジョンが酒屋に焦りながら入ってきたことで一蹴されたのである。

バーン!!

「た、大変だ!!」

ジョンがここまで焦ることはめったにない。
それが逆に物事の重大さを物語っていた。

「マッシャー一家だ!
 マッシャー一家がこの街に攻めて来るぞ!!」

「えぇええっ!?!?!?」

酒屋全員が驚いていた。
マッシャー一家といえばここいらを縄張りに活動する盗賊一家のことだ。
人口五千人の大都市すら一日で落としたという脅威の戦闘能力を持っている。
それがこの人口千人に満たない小さな街に攻めてくる。
全員が家に帰り荷物を纏めようとあわてて戸口から飛び出していった。
残ったのはエリーとジョンと保安官。
そして蒼と酒屋の店主だけになった。

「マッシャー一家となると一筋縄では行かないわよね……。
 この街の防御力はゼロに等しいし……。
 ジョン、どうしようかしら。 
 私も逃げようかなぁ……」

「この街も終わりじゃ……。
 わしも店をたたんで出て行くとしよう……」

酒屋の店主はグラスを台の上に置くとしょんぼりした顔でろうそくを眺めた。

「ジョン、どれぐらい武器は残ってるの?」

机に肘を付きため息をつくエリーにジョンは淡々と備蓄残量を報告する。

「弾は約二百発ちょい。
 遊びすぎた報いかもしれないね」

「あーしくったわ……。
 弾でドミノ倒しとかして遊んでる場合じゃなかった……」

「早撃ち競争とか言ってみんなの前で瓶とか缶も撃ちまくってたよね」

「あー……どうしましょ」

深くなっていくため息。

「えっと……すいません。 
 話の展開が見えないんですが……」

こちらは一向に話についていけないお方。
西部はじめてなのにこれからの展開が読めるほうがすごいよ。

「マッシャー一家が攻めてくるのよ……。
 あんたも自分の船に帰っていいわよ。
いても素人のあんたじゃ邪魔にしかならないだろうしね……」

エリーは机に頭をぶつけた。

ドーン……

「え、エリーさんすごい勢いで頭ぶつけたんですね……」

蒼がひきつった笑いをしてジョンが

「思ったより重たいんだね、頭」

のっかった。

「な、なんなわけないでしょうが!」

エリーがキーと反論する。また爆発音が響いた。

「まさかっ……」

エリーはリボルバーをホルスターに突っ込むと酒屋のドアを突き抜けて外に転がり出た。

(まじ……?)

エリーの目にうつったもの。
小さな国一つ滅ぼせるであろう規模の人数がずらっと勢揃いしていたからだ。
街の一番隅の家から炎と煙が登っている。
先ほどの爆発音はこれだったようだ。
普通なら大混乱になるはずなのだが今回は違った。
だって誰も街に残っていないのだから。

「なんだぁこの街は。
 女ばかりか人っ子一人いねぇじゃねぇか」

大きな黒い馬にのり髭をふんだんに蓄えた男が燃えた家の前で唾を吐いた。

「親分、あれ」

唾を吐いた男は親分だったようだ。
親分の隣に立っている男がエリーの方を指差した。

「いよぉ、姉ちゃん?
 俺とダンスでもどうだい?」

げへへと下品に笑いながら一人の男がエリーに近づいてきた。
そのままエリーの肩を抱く。

「……て…」

「あ?
 あんだって?
 へへへ……」

一発の銃声。
へらへら男が頭から血を噴き出して倒れた。
エリーの右手には紫の硝煙をなびかせるリボルバーが握られている。

「だから放してって言ったのに」

「このアマが!」

エリーに銃口を向けた一人は心臓を綺麗に撃ち抜かれ道に突っ伏した。
驚くほどのスピードだ。

「お、親分!
 どうします!?」

親分は馬から降りて二挺の銃をエリーにむけた。

「決まってんだろぅ?
 戦争さ」

エリーは銃を親分に突きつけると

「誰にケンカ売ったのかおしえてやるわ!」

宣戦布告した。
少しおいてエリーへと銃弾が大量に襲い掛かってきた。
すばしっこく横に逃げ、樽を盾にしながら応戦する。

「ちくしょぉ!
 なんだあの娘の命中率のよさは!」

エリーのリボルバーが一発弾を吐き出すごとに一人の男が
命を奪われていく。

「撃ちまくれ――うげぇっ!!」

(やばい、ミスった。
 弾の予備今持ってない……。
 隙を見て酒屋に入ってジョンから弾を……)



酒屋の中



「ま、マジかよ、エリー!戦うのか!?」

ジョンはごくりと展開を見守っていた。
蒼はまだ何が起きているのか把握出来ていない様子で椅子に腰掛け帽子のゴミをはらっている。

「やれやれ、はじまってしまったか……」

「マスター?」

年老いた酒屋の主人は椅子に腰掛け一杯のラムを飲んだ。

「……ジョン。
 さっき弾がねえって言ってたよな?」

「え?
 あ、あぁ…」

「こいつを使ってやってくれないか?
 買ったはいいものの無用のながぶつでね」

主人は奥の扉から樽が二つ繋がったようなものと斧を持ってきた。

「マスター、これでどうしろと?」

「まぁいいから見てな」

主人は樽を斧で割った。
すると中から大量の銃がでてくるではないか!

「ま、マスターあんた……」

「毎日酒を飲みに来てくれた礼さ。
 こいつで……」

大量の銃声が響きエリーが酒屋に飛び込んできた。

「なんて数なの…!
 弾なくなっちゃったしどうしよう!」

さっと壁を背後にエリーがリボルバーにジョンからもらった弾をこめる。
一瞬の銃声が止んだ隙を狙って銃を放つ。

「ジョン!
 手伝いなさいよ!」

「はいよ、エリー」

銃弾がガラスを割り壁をえぐる。

「やれやれよくやるぜ」

主人は酒瓶を丸ごと傾けた。

「二人とも、これ」

蒼はずるずると樽を引っ張って二人の真ん中に置く。

「サンキュー」

エリーは弾がなくなったリボルバーを床に投げると樽から新しく銃を取りだし弾を放つ。
その繰り返しで敵の数を次々と減らしていく。

「無限って可能性はないでしょうねぇ?」

エリーは弾がなくなった銃を投げ捨て新しい銃を樽から取り出した。
それを窓の隙間からぶっ放す。
しばらくの撃ち合いの後、ぴたりと敵の射撃が止んだ。
全員が窓から様子を伺う。
敵が物陰に避難していく。

「何よ!
 私に恐れをなしたわけ!?」

エリーはがははと笑った。
と、甲高い音を出しながら空を飛翔してくるものがある。
金属製の丸い筒に先が尖った形のものが白い噴煙をあげて酒場の壁に刺さった。

「まさか!」

全員が反射的に伏せると同時にそれが爆発した。
何かがこげる匂いと建物が崩れる音が響く。

「逃げるのよ!」

エリーの声に全員が何も考えずに外に飛び出した。
燃えた木片を払いながら建物の出口に殺到する。
必死に脱出した全員に大量の銃が突きつけられた。

「チェックメイトだ仔猫ちゃん」

四人を囲む大量の子分達を押しのけ出てきた
親分がエリーをじろりと睨み付けた。

「ふん、私はまだ戦えるわよ?」

挑発する。
煤で汚れたエリーの顎を親分はつかみ自分に向けた。

「なかなかいい女じゃねぇか。
 こいつに四十人もやれたとはな。
 なさけねぇかぎりだ」

手足を押さえられ縄をかけられ自由を奪われる。
抵抗できないエリーは親分におもいっきりの悪態をついた。
とてもセリフにできないような。
強いて言うならF○○kとか……。

「……生意気な小娘だ。
 痛めつけ、ずたずたにしてから殺してやるとしよう。
 自分の街が滅びるのを見えないのはさぞかし残念だろうな?
 えぇ?
 はっはっはっは……」

親分は部下に一挺の拳銃を出させるとそれをエリーに向けた。

「親分!
 もう一人女がいますぜ!」

わっと蒼の周りに人だかりが出来た。

「しかもなかなかかわいい!
 親分、俺が頂いていいですか!?」

親分はと言えばエリーに夢中のようで

「うるせぇ!
 てめーらの好きにしやがれ!
 俺はこっちの保安官のお嬢さんをいただくぜ」

「へへ、お嬢ちゃん親分もああ言ってる事だし楽しませてもらうぜ」

そんな怖い人たちを眺める蒼。
一人の手が蒼の腕を掴む。

「な、何するんですか!?
 離して下さい!」

蒼は怯え、怖がる。
今までこんなにぎらぎらと血走った人間――というか男達を見たことがないからだ。

「へへへ、いいねぇ、その反応。 
 久しぶりの女の子だ。
 たっぷり味わせてもらうぜ!」

「ほら、暴れんな、大人しくしやがれ!」

「……ふざけないでください!
 私に触らないでくださいっ!!」

腕をねじって男たちの手から逃げる。

「ほう?
 俺達は汚らわしいと?
 こっちも生意気な娘だ。
 その精神を壊すまで痛めつけてから殺してやるよ」

「やめてください!
 触らないでっ――!!
 ………知りませんよ?」

「あ?」

「知りませんよ?」

「何言ってんだこの小娘
 恐怖で頭がいっちまったのか?」

ゲラゲラ笑い出す男達。
その男達をぐるっと眺めると

「……ごめんなさい」

蒼の目がすっと冷たくなった。
人を見る温かい目じゃない。
物……いや道端の石ころ以下の存在だと。
目の前の人たちをそう決め付けた目だ。

(な、なによあの娘。
 あの目……それにこの殺気……。
 艦そっくりの狂気が……)

エリーは親分のひげを引っ張りながらそう思う。

「いでで!
 この保安官の女め!
 ヒゲを引っ張るな!」

蒼は空のように透き通った目を閉じた。

「な、なんだこの小娘!?
 無抵抗なっちまいやがった、ひゃはは!
 それじゃいただきまぁぁす!!」

欲望に負けた男は見なかった。
いや見れなかったというほうが正しいか。
空が暗くなり、陽天楼と呼ばれる化け物が空に浮いているところを。
なぜならば――いうまでもないか。

『超空要塞戦艦ネメシエル』

それにハリネズミのように付いている四十ミリ光波機銃から放たれた
一筋の赤色の光が欲望に負けた男の体を一直線に貫いたからだ。

「お、親分――っ!!
 なんですかあれっ!!!」

みんなが慌てふためき空の化け物を指差している。
勇気ある男がネメシエルに銃を向け引き金を引いたが
銃弾は軌道を曲げられ空に消えてゆく。

「お、俺が知るかよ!」

全員が空に浮く未知に驚き喚く。

(あれ?
 あの銃口私を狙って……)

「エリーさん。
 縄を切るので動かないでください」

エリーがはっと蒼を見る。
蒼はエリーにVサインを返すと
ネメシエルから一筋の光が降ってきた。
それは正確に縄を焼ききり自由になったエリーは思いっきり親分にアッパーを食らわした。
空を見ていたせいで親分はモロに受け止め地面にすっころぶ。
倒れた親分の額に銃をすかさず突き付け

「まだ戦えるって言ったじゃない」

「お、おい待て!
 待ってく――」

「見苦しい」

エリーは引き金を引いた。
ピクピク動いているのはまだ意識があるからなのかそれとも壊れた脳が無茶苦茶に指令を出しているからなのか。

(どっちでもいいわ、別に)

「ぁ、ぉ親分がやられたぞ!」

頭を失い崩れはじめたマッシャー一家。

「あの小娘だ!
 殺せ!
 あいつが化け物をきっと操っているんだ!
 そいつを殺せばあの化け物は死ぬにちがいねぇ!!」

沢山の銃口が蒼に向けられる。

「蒼、危ないっ!」

ジョンが叫ぶ。

「死にやがれ悪魔め!」

大量の銃弾が蒼に飛翔する。
エリーには用意に想像できた。
鉛に体を引き裂かれ砕け、命を失う蒼の姿を。だがそうはならなかった。
蒼の前で銃弾は巨大な力でその軌道を曲げられ一発として蒼に当たることはなかったからだ。

「……終わりですか?
 なら次は私の番ですね」

蒼はにやりと笑うと右の掌をマッシャー一家に向けた。
ネメシエルの艦底についている機銃、ガトリング砲が駆動し、こちらを睨み付ける。
艦底の幾何学な光模様が静かに波打つように輝く。

「お、お前一体……」

その気迫に押された男が後ずさりする。

「ただの通りすがりの戦艦ですよ」

蒼はさらっとその問いに答え、マッシャー一家に向けた右の掌を閉じた。
機銃、ガトリング砲が赤、青のそれぞれの光
に満たされると空気をざっと切り裂く音が轟き強烈な閃光が空から降り注いだ。
機銃等から放たれた光波レーザーは正確に
マッシャー一家のメンバーを貫いていく。
鉛とは違い焼きながら物を切断するためあまり血は出ないが
四十ミリ、六十ミリもの太さの光は確実に命を肉体から削ぎ落としていった。
赤、青の閃光が物陰に隠れたにも関わらず
次々と物ごと射抜いていく。

「くそっ!!
 家の中に閉じこもれ!
 見えないなら撃ちようがないはずだからな!」

そう考え付き家の中に飛び込んだやつもいた。

「――ごめんなさい」

舷側五一センチ三連装光波共震砲がゆっくりと駆動した。
機銃やガトリング砲などとは桁違いの太さをもったオレンジ色の
レーザー光が重低音とともに発射された。
それが家に刺さると大爆発。
飛び交う焦げた木片が蒼の周りにちらばり男が先ほどまで被っていた帽子が転がる。
小国を滅ぼせるほどの大群は一隻の戦艦を前にあっという間に全滅。
事実上マッシャー一家は反撃もままならないまま滅亡した。

      ・
      ・
      ・

「もう行っちゃうの?」

エリーは残念で仕方ないといった表情を隠すことなく蒼に話しかけた。
蒼はネメシエルの甲板ぎりぎりで。
エリーは建物の屋根に座っている。

「はい。
 ネメシエルの気象レーダーがスーパーセルを
 とらえたので。
 プラズマもたっぷり貯まってるみたいだしこれを逃すといつになるのかわからないので……」

「二時間前に戦闘が終わったばかりなのよ?
 みんなも戻ってきて今からあなたの為にパーティーを開こうとしていたのに……」

エリーは下を見下ろした。
沢山の人がバタバタとせわしなく用意に追われている。

「私も本当はもう少しいたいのですが……」

蒼も下を見て残念そうに首を振った。

「ならいれば……」

「ダメなんです。
 私とこの戦艦があるかぎりこの世界の歴史を変えてしまう……。
 マッシャー一家によって滅ぶ街、潤う街。
 歴史の無限の選択肢を私はいま木っ端微塵に消し飛ばしてしまいました。
 私がこの時代にいつづけることがすでに歴史のタブーに触れつつあるんです」

ゴロゴロと雷鳴が轟きアリゾナには珍しい巨大な雨雲が遠くから接近していることを教えてくれた。
湿っぽい空気も風に流されエリーの頬を撫でる。

「………」

がしっ。

「ふぇ!?
 え、、エリーさん!?
 あ、危ないです落ちますよ!?」

エリーは黙って蒼を抱き締めた。

「ありがとう蒼。
 あなたがいなかったら私達の街は歴史から消えていた所だった。
 私は神を信じたことはないけどあなたが
 このタイミングで現れてくれたのは神のおぼしめしとかやらなのかもしれないわね」

エリーは蒼を離すと自分の帽子を差し出した。

「え?
 な、何ですか……?」

「交換よ交換
 蒼のとね」

蒼は納得したように自分の帽子をエリーに差し出した。
エリーは自分の帽子を蒼の頭に乗せる。

「それじゃまた会いましょうね?」

エリーは蒼にそう言葉を投げ掛けた。
蒼はゆっくり頷くと名残惜しそうにエリーを見ながら艦橋の扉を開け中に入る。

『お帰り、蒼副長』

ネメシエルの無機質なお出迎えにちいさく「ええ」とだけ答え
蒼は艦橋の窓からエリーを見下ろした。
帽子を両手で握りこっちをじっと眺めている。
蒼は頭の上にのっている帽子を触った。
もう二度とここには来れないだろう。

(少しの間でしたがつらく悲しい兵器としての人生の一瞬で
 人の温かさに触れることができて本当によかったです。
 エリーさん、ありがとう)

「機関始動。
 予定通りスーパーセルに向かいます」

『了解。
 補助機関始動』

小さな機関音が後部から響き、窓の装甲シャッターが少しずつ閉じていく。
エリーの姿が装甲シャッターによって消えると蒼は目を閉じた。
ふわっとした浮遊感が体を包みこみ、すこし大きくなった機関音が聴覚を遮る。
外を蒼が見たときは既にエリーの街は小さくなっていた。
でもぽつんと屋根の上でこちらに手を振っている一人の少女の姿は
かろうじて捉えることが出来る。

「…………っ!」

目頭が熱くなった。
一筋の涙が流れ服に染みがつく。
帽子をぎゅっと抱きしめる。
かすかなお酒と硝煙の臭いが心地よく蒼の鼻腔に入ってきた。

「舷側四六センチ三連装光波共震砲対空モードで真上に発射願います」

『了解――だが敵はいないみたいだが……?』

「それで構いません。
 お願いします」

ずずっと腹の底に響くような轟音が発生して今オレンジの光が
ネメシエルの真上へと伸びていったはずだ。
レーザーは少し進むと大きく弾け花火のように広がる。
それはエリーの街からもくっきり見えたはずだ。

「また会えますように」

蒼は小さく呟くと帽子を膝の上に置いた。

「主機作動!
 これよりコグレに帰還します」

それからだろうか。
アリゾナに変な噂が一時期流行ったのは。
エリーの街は巨大な怪物に守られていると。
それはいかなる攻撃をも通さず
あのマッシャー一家をあっという間に片付けてしまったと。

      ・
      ・
      ・

「暇ねぇ、マスター」

エリーはからからとグラスを鳴らした。
新しく綺麗に治った酒屋はまだニスの臭いがほんのり漂っている。

「まぁまぁ、エリー。
 平和ほどすばらしいものもないんじゃないかな?
 戦争よりかは私はこちらの方が好きだよ」

「またおんなじこと言って」

マスターとエリーは顔を見合わせて笑った。

バーン(扉が開く音)

「エリー大変だ!」

ジョンが飛び込んできた。

「待ってました!
 マスター行ってくる!」

「気をつけるんだよ」

「ジョン早く案内しなさいよ!」

「お、落ち着けって……。
 ただ牛が逃げただけだぞ!?」

「う、牛!?
 戦艦じゃなくて!?」

「牛だけど」

「なーんだ……つまんない」





               了



まずごめんなさい。
リボルバーと書いたのですがこれはエリーちゃんが
SAAを使っているのかどうかちょっと分からなかったからです。
それにそれほど僕は銃に詳しいわけではないので・・・。
矢端兄さんごめんなさい。
細かいところはつっこまないで・・・。
あとなんか構成めちゃくちゃじゃねーかはげとか
最後結局蒼さん無双かよクズとか思わないでください。
本当にごめんなさい。
許してください。
ごめんなさい。

ダンケとかイミフなキャラだしてこれまたごめんなさい。
それと一万文字ちょいという膨大な量になってしまい
本当に申し訳ないです。

こんな駄作。
そしてクソ。
いやむしろうんこみたいな作品ですが
よろしければもらってやってください。
あぁ恥ずかしいっ。
しばらく矢端兄さんのブログにいけないぐらいに恥ずかしいです。

ごめんなさい。
少し引きこもりたい。
あぁごめんなさい。
それとこんなに遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
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